仏たちの役割分担が空間配置からわかります。空間のなかの位置によって要素をとらえるようにします。居場所がみつかれば生きていけます。
頼富本宏著・中村佳睦画『すぐわかる マンダラの仏たち(改訂版)』(東京美術)はマンダラの入門書です。マンダラに登場する仏たちとマンダラの全体的な構成・見方を解説しています。



はじめに 密教のほとけとは
序章 図解・誰にでもわかるマンダラの見かた

第一章 マンダラのほとけたち
 大日如来 1 大日如来とは
 大日如来 2 ビルシャナと西方要素
 大日如来 3 大日如来の姿
 大日如来 4 胎蔵大日如来
 大日如来 5 金剛界大日如来
 五仏 1 金剛界五仏
 五仏 2 阿閦如来
 五仏 3 宝生如来
 五仏 4 阿弥陀如来
 五仏 5 密教の阿弥陀如来へ
 五仏 6 不空成就如来
 五仏 7 胎蔵五仏
 五仏 8 四仏
 金剛薩埵 1 密教の修行者
 金剛薩埵 2 金剛薩埵の宗教的意味
 金剛薩埵 3 金剛薩埵の図像
 金剛界三十二尊 1 密教の菩薩たち
 金剛界三十二尊 2 四波羅蜜菩薩 1
 金剛界三十二尊 3 四波羅蜜菩薩 2
 金剛界三十二尊 4 十六大菩薩 1
 金剛界三十二尊 5 十六大菩薩 2
 金剛界三十二尊 6 八供養菩薩
 金剛界三十二尊 7 四摂菩薩
 胎蔵マンダラのほとけたち

第二章 密教のほとけ - 明王たち -
 明王とは 1 呪力をもった者の王者
 明王とは 2 金剛から明王へ
 明王とは 3 忿怒尊の役割
 不動明王 1 不動明王とは
 不動明王 2 不動明王の十九観
  不動明王の十九種図像的特徴
 五大明王 1 五大明王とは
 五大明王 2 旧訳「仁王経」と五大力菩薩
 五大明王 3 新訳「仁王経」と五大金剛
 五大明王 4 立体マンダラ
 五大明王 5 五大明王の成立
 五大明王 6 不動明王と降三世明王
 五大明王 7 軍荼利明王
 五大明王 8 大威徳明王
 五大明王 9 金剛夜叉明王
 そのほかの明王たち
  1 愛染明王 2 孔雀明王 3 太元帥明王 4 明王の少数派

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マンダラとは、ほとけたちの種類と配置を中心にした密教の聖なる世界です。空海によって初めて日本に伝えられたのは、胎蔵と金剛界の二つのマンダラですが、いずれも大日如来という宇宙全体を象徴するほとけが中心に位置し、その周りをそれぞれ四仏が取り囲んで役割を分担しています。


本書をみれば、マンダラのどこにどの仏が位置し、それらがどんなことを意味しているのかをしることができます。

たとえば極楽浄土の仏として絶大な人気をほこる阿弥陀如来は大日如来の西方に位置し、この配置により「西方浄土」がしめされます。

また京都・東寺の立体マンダラについても紹介していて、これは、五仏・五菩薩・五大明王をふくむ 21 体の仏を空間配置しています。




このように、わたしたちがばらばらにこれまでみてきたさまざまな仏たちが空間配置によってみごとに体系化(システム化)されています。マンダラは、たくさんの仏を空間的に配置し、それぞれの仏の意味・役割を空間配置によってきめています。空間にしめる場所・位置によって役割分担がきまります。

このことは、たとえばスポーツの球技において、それぞれの選手にポジションがあることと似ています。球技でなくても、チームや組織・社会・オーケストラ・生態系などでも似たようなことがみられます。

その人の存在意義は、そのひと個人の能力だけできまるのではなく、その人の位置や居場所できまります。場所がきまると能力や個性がきわだってきます。

何事も、対象や要素だけで理解しようとするのではなく、それらがどこに配置されているかを空間的・視覚的にとらえるようにするとよいでしょう。勉強や仕事をすすめるときも、自分にとっての最適な場・位置(ポジション)をさがしたほうがよいです。居場所がみつかれば自然に生きていけます。



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▼ 参考文献
頼富本宏著・中村佳睦画『すぐわかる マンダラの仏たち(改訂版)』東京美術、2011年7月30日