多数のイルージョンを解説とともに紹介しています。人間の情報処理のしくみがわかります。情報処理能力をたかめるために役立ててください。
『脳が生み出すイリュージョン』(別冊日経サイエンス)には 187 ものイルージョンが解説とともに収録されており、錯視を存分にたのしむことができます。




はじめに イリュージョンへの誘い 北岡明佳

PROLOGUE あなたがあなたである理由

CHAPTER 1 誤知覚の基礎
 錯覚の神経科学
 3D錯視の遠近法
 大小みなこれ幻
 パレイドリア 無意味に意味を見いだす幻
 ひとひねりが生む幻
 影も形もなし
 ヨリックの幽霊 残像の神経科学
 異次元の色
 パイロットを窮地に陥れる錯覚
 影におびえて
 痛みは錯覚

CHAPTER 2 見つめ合う幻
 顔に何が見える?
 目は物語る
 愛の幻想

CHAPTER 3 アートと錯覚
 オプ・アートに見る動きの幻
 ありえない彫刻 立体作品の錯視
 本物よりも本物らしく
 まちなかの錯覚
 時を得た広告
 おいしい錯視


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私たちが経験しているすべてが、実は自分の想像力が生み出した虚構である——これは神経科学の事実だ。自分の感覚は正確で現実そのままだと感じられるものの、それらが外界の物理的実在を再現しているとは限らない。(中略)

目や耳などの感覚器官からの入力を解釈しているのと同じ神経機構が、夢や妄想、記憶違いの原因ともなっている。言い換えると、実在と想像物は脳のなかで物理的起源を共有している。


本書を見ることによって錯視をたのしみながら、視覚系の情報処理のしくみを理解することができます。

わたしたちの目には、環境(外界)から光(可視光線、電磁波の一種)がはいってきます。光は電気信号に変換されて、信号が脳におくられ、脳が、その信号を処理するとイメージ(映像)が生じます。これが「見る」しくみであり、視覚系の情報処理のメカニズムです(図1)。目はセンサー、脳はプロセッサーとかんがえるとわかりやすいでしょう。


180808 錯視
図1 視覚系の情報処理のしくみ


わたしたちは、ねむっているときに夢を見ます。このときは目は閉じているにもかかわらずイメージ(映像)が生じます。このことからもイメージは脳がうみだしていることがわかります。

錯視も、このような視覚系の情報処理によって生じ、これは、情報処理の「エラー」といってもよいかもしれません。

エラーは、視覚系だけでなく聴覚系でも味覚系でも嗅覚系でも皮膚感覚系でもおこります。これらをまとめて「錯覚」といいます。

錯覚は実際に体験してみる、実験してみるのが一番です。体験をし、そして本書の解説をよめば、あなたの情報処理の精度をたかめるきっかけがえられるにちがいありません。あるいはアーティストでしたら、創作に錯覚をいかしていくことができます。


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▼ 参考文献
マルティネス=コンデ&マクニック著『脳が生み出すイリュージョン -神経科学が解き明かす錯視の世界-』(別冊日経サイエンス)日本経済新聞出版社、2014年4月16日