縄文時代の前半では、どちらかというと物質文化が発達したのに対し、後半では、精神文化が発達しました。
特別展「縄文 ― 1万年の美の鼓動」が東京国立博物館で開催されています(注1)。縄文時代の数多くの出土品のうち6件が国宝に指定されています。第4展示室(縄文美の最たるもの)にそれらすべてが結集します。

6件のうち、火焔型土器をのぞく5件は土偶です。


  • 土偶「縄文のビーナス」長野県茅野市 棚畑遺跡、縄文中期(前3000~前2000年)
  • 土偶「縄文の女神」山形県舟形町 西ノ前遺跡、縄文中期(前3000~前2000年)
  • 土偶「仮面の女神」長野県茅野市 中ッ原遺跡、縄文後期(前2000~前1000年)
  • 土偶「合掌土偶」青森県八戸市 風張1遺跡、縄文後期(前2000~前1000年)
  • 土偶「中空土偶」北海道函館市 著保内野遺跡、縄文後期(前2000~前1000年)
※「縄文のビーナス」と「仮面の女神」は 7/31 から展示されます。ほかは通期展示です。また有名な「遮光器土偶」は国宝には指定されていません。


「縄文のビーナス」は、お腹がおおきな妊婦をモデルにしたとされる土器で、安産や子孫繁栄などの祈りがこめられているとかんがえられます。

「縄文の女神」も、つきでた胸とお腹、おしりをつきだした姿から妊婦がモデルになっていることがわかります。顔がまったくえがかれておらず、かなり抽象化された土偶です。

「仮面の女神」は、逆三角形の顔をもつ土偶であり、頭にはひもの表現があり、仮面をかぶっているようにみえます。胴体には、渦巻き模様などの不思議な文様がえがかれています。

「合掌土偶」は、すわった状態で、正面で手を合わせている土偶であり、祈りをささげているようでもありますが、お産(座産)をしている姿だという説もあります。両足には、一度こわれたものが当時の人によって接着・修復された跡がのこっています。病気や怪我の回復の意味がこめられているとかんがえる人もいます。

「中空土偶」は、高さ 40 cm をこえる最大級の土偶であり、内部は空洞になっており、両足のあいだにある連結部の穴につながっています。この連結部は、内部の空気をぬくなど、大きな土偶を完全に焼きあげるためにつけられたとかんがえられています。なお両腕はうしなわれています。

このように、土偶は、基本的には女性がモデルになっているので、子孫繁栄や生命力信仰の意味がこめられ、祭祀の道具としてつかわれていたのではないかとかんがえられます。

またこれらの土偶は、縄文時代の中期〜後期につくられたものであるので、縄文時代の後半に、人々の精神文化がより発達したことが想像できます。縄文時代の前半では、どちらかというと物質文化が、後半では、どちらかというと精神文化がより発達したのでしょう。土偶は精神文化のシンボルであり、「火焔型土器」は、物質文化と精神文化がまじわるところでつくられたのではないでしょうか。

縄文時代のような先史時代は情報量が非常にすくないのでわからないことがおおいですが、土器や土偶などをみて仮説をたて、また発掘調査をして、仮説を検証していくという方法によって、縄文時代の人々がのこした「メッセージ」をよみとっていくことができます(注2)。

なお現在、東京国立博物館のミュージアムシアターでは、「DOGU 美のはじまり」を上演しています(注3)。国宝土偶全5件について、うつくしい映像をつかってくわしく解説しています。展示とあわせてみてみるとよいでしょう。


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特別展「縄文―1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(まとめ)

▼ 注1
特別展「縄文―1万年の美の鼓動」 
特設サイト
会期:2018年7月3日 ~9月2日
会場:東京国立博物館 平成館
※ 撮影コーナー以外は撮影は許可されていません。

▼ 注2
考古学の方法は、科学捜査や推理小説の方法とおなじです。
真実への推理 - 名探偵コナン 科学捜査展(日本科学未来館)-
人類の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 人類の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-

▼ 注3
東京国立博物館 ミュージアムシアター「DOGU 美のはじまり」
特設サイト
国宝土偶

▼ 参考文献
『特別展 縄文 ― 1万年の美の鼓動』(図録)NHK・朝日新聞社、2018年7月3日
「縄文人への思い」(篠田謙一)科博メールマガジン, 795, 2018年7月12日
「縄文の美 人々の祈りがこめられた“芸術品”の数々」Newton, 2018年8月号、ニュートンプレス、2018年8月7日