動物保護活動が実をむすんでくると、つぎに、人間と動物の共存という問題が生じてきます。エコツーリズムが問題解決のカギになります。
『ナショナルジオグラフィック』2018年6号では、保護活動がみのりつつあるタンチョウについて報告しています。



生息数が増えたことで、道東ではさまざまな問題が出てきた。タンチョウがコーン畑にまかれたばかりの種子をついばんだり、牧場で飼料を食べたりする被害が目立ってきたのだ。(中略)農家は被害に頭を悩ませながらも、単調と共存できる道を見つけようとしている。

その背景の一つには、タンチョウが村の重要な観光資源になっていることがある。 

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タンチョウは、世界にいる 15 種のツルの一種で、日本・中国・朝鮮半島・極東ロシア南部に 3300 〜 3500 羽が生息、国内では北海道にのみ、ほとんどが道東に集中して生息しています。極東ロシア南部や中国東北部で繁殖するタンチョウは、朝鮮半島や中国南部にわたって越冬しますが、北海道では、年間を通じておなじ地域にとどまる「留鳥」がほとんどです。

タンチョウは、保護活動がみのってその数を順調に回復してきましたが、その一方で、タンチョウが畑の作物を食べたりして、農家の人たちとの共存の問題がでてきています。保護から共存へ、重要な転換期にはいったといえるでしょう。

このようなことは、動物保護や環境保全活動をすすめていると日本国内とはかぎらずどこでもおこります。わたしが活動しているネパールでも、植林・森林保全プロジェクトをすすめていると、「森が回復するとサルがやってきて農作物を食べてしまう。森はない方がよい」といった意見があります。

人間と動物はどう共存していけばよいか? この問題の解決策のひとつはエコツーリズムにあります。環境を保全しつつ、ツーリストにきてもらって、その地域にお金がおちるようにする仕組みをつくります。

道東でも、タンチョウ目当てのツーリストが増えているそうです。

時間はかかりますが、やっていかねばなりません。


▼ 参考文献
『ナショナル ジオグラフィック 日本版』(2018年6月号)日経ナショナルジオグラフィック社