近年、景観が注目されています。建物などを見たら同時に景観も見るようにします。中心視野とともに周辺視野もつかいます。
平成 30 年みどりの学術賞・記念講演会にいってきました(注)。東京大学名誉教授・熊谷洋一さんの講演「自然景観の保全と景観シミュレーション」が印象にのこりました。

「みどりの学術賞」は、「みどりの日」(5月4日)についての国民の関心と理解を促進し、「みどり」についての国民の造詣をふかめることを目的に創設されました。


Science → Technology → Art
(科学:ちえ、真)→(技術:わざ、善)→(芸術:こころ、美)


近年、景観が注目されています。高度経済成長期までは開発につぐ開発で、景観は無視されてきました。環境アセスメントは「環境あわすめんと」と陰ではよばれていました。しかし時代はかわりました。

景観にとりくむためには、Science(科学)の応用、Technology(技術)の段階にとどまっていてはいけません。その先にある Art(芸術)にまでふみこまなければなりません。「ちえ」「わざ」だけでなく「こころ」も必要です。「真善美」が重要です。


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たとえば観光地にいって重要文化財の建物を見たとしましょう。建物の外観・構造・機能・・・。なかにはいってみたりしてじっくり観察します。感動します。

しかし景観はどうでしょうか。景観とは、建物などの対象の周辺の状況であり、風景です(図1)。環境といってもよいです。景観は破壊されてしまっている場合がおおいです。あるいは景観まではあまり見ないでかえってきたという人もいるかもしれません。

180603 景観
図1 対象と景観


これからの時代は景観も大事です。文化財を保存するだけでなく、それをとりまく景観も保全し、あるいは景観をつくっていかなければなりません。景観は、自然環境の保全をすすめるうえでも大切な観点になります。

景観を見るためのひとつの重要なテクニックは周辺視野をしっかりつかうことです。視野には、中心視野と周辺視野があり、中心視野では、くっきりはっきりと対象を見ることができます。一方の周辺視野では、周辺にいくほどぼやけますがその場の全体状況を見ることができます(図2)。

180603b 景観
図2 中心視野と周辺視野


多くの人の場合、周辺視野が十分につかえていません。中心視野で対象を見たら、同時に、周辺視野にも意識をくばります。「同時に」というところが重要です。目をきょろきょろさせる必要はありません。

このようにすると景観も視野のなかにはいってきて、文字どおり視野がひろがります。また空間的な大きなひろがりのなかで対象をとらえられるようになります。空間法の実践になります。

とくに子供たちにとっては、景観は、原風景としてきわめて重要です。原風景は心の奥底にのこって、その人に一生 作用しつづけます。 あなたの原風景はどんなイメージでしょうか?

わたしたちは周辺視野にもっと心をくばらなければなりません。


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▼ 注
みどりの学術賞 受賞記念講演会
日付 2018年6月2日
場所 日本科学未来館
主催 内閣府
共催 日本科学未来館