発達障害についてただしい知識をえて、人間理解をふかめ、多様性をみとめる社会をつくっていくことが大事です。
田中康雄著『もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?』は大人の発達障害に関する入門書です。

「自分には発達障害があるのかもしれない」「自分の身近な人が発達障害かもしれない」「身近な人に発達障害があると打ち明けられたけれど、どう接すればよいのだろう」とまよったり、とまどったりしたときに本書が役立ちます。



プロローグ 社会に出てから「生きづらい」!
第1章 大人の発達障害って、なに?
第2章 「私ってそうかな」と思ったら
第3章 毎日の「困った!」はこうして解決
第4章 「あの人ってそうかな」と思ったら
エピローグ 私もみんなも「生きやすい」

「発達障害」とは、生来的な特性、生まれ持った発達上の個性、特性があることで、日常生活に困難を来してしまった事態と僕は理解しています。「発達障害」を考えるとき、こうした個々にある特性と、それゆえに生じる生きづらさを考える必要があります。

発達障害の人の割合は、その種類や症状の程度はさまざまですが、 おおよそ人口の約 10 %くらいと言われています。 10 人に1人というと、意外と多いと感じる方もいるでしょう。みなさんの子ども時代にも、クラスで3~4人はいた計算になるのですが、当時は発達障害として気づかれなかったわけです。発達障害が少しずつ知られるようになり、理解されることで、そう判断される人が増えてきたのかもしれません。


何度いわれてもわすれてしまう、わすれ物が多い、他人に意思をつたえにくく誤解されやすい、他人の気持ちが把握しにくい、緊張がつよくて突然あたふたしてしまうという人がいます。あるいは冗談や比喩、本音とたてまえのちがいがわからずに、いわれた言葉をそのままうけとってしまう人もいます。

周囲の人も、「おなじことを何度いえばよいのか」「不真面目な人間」「努力をしない」「他人をバカにしている」「協調性がない」という否定的な目でその人をみてしまいます。

もしかしたらその人は発達障害かもしれません。発達障害に関するただしい知識をもっていないと状況は悪化するばかりで、何も改善されません。おたがいにくるしい日々がつづいていきます。わたしもかつて、ただしい知識をもっていなかったために失敗したことが3回ありました。

著者の田中康雄さんが解説しているように、発達障害についてまずはただしく理解し、そして仕事や生活でこまっていることをどうしていくかをともにかんがえることが大切です。

たとえば、今いる場所が自分にとってちがうんじゃないか? もっと自分にあった場所があるかもしれないとおもったら、職場や環境をかえるというのも一つの解決策になります。

ところがこのようなことは発達障害の人だけの問題ではなく、だれにでも共通する問題かもしれません。

本書をよみすすめていくと、この問題は、障害理解をきっかけにした人間理解のことだったのだとわかってきます。 これまでの世の中には、人の個性をみとめずまたカテゴリー分けをして人間を理解した気になってしまう風潮がありましたが、これからは人々の多様性をみとめる社会にかわっていきます。人間理解は多様性の理解へとつながっていき、ひいては多様性のある社会の構築につながります。


▼ 文献
田中康雄著『もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?』すばる、2011年7月30日