被災地域の、野生のきのこ・山菜、野生鳥獣の肉は食べられません。検査方法と基準値を知り、内部被曝をさけるようにします。
■ 食品の検査

野生のきのこ・山菜、野生鳥獣の肉などは、基準値を現在でもこえているものが多いので十分に注意してください。山林は除染ができず、放射性物質の低減ができないので当然のことです。

検査結果をもとに、基準(100 Bq/kg)をこえる可能性のある地域では、出荷自粛や出荷制限・摂取制限をおこない、基準値をこえた食物が流通しないようにしています。制限に関する情報は、林野庁や自治体のウェブサイトで公表されています。

きのこや山菜の出荷制限等の状況について(林野庁)
水・食品等の放射性物質検査(福島県)

水道水(浄水)については、2011年6月以降、基準値の 10 Bq/kg をこえる放射性セシウムは検出されていません。

実際に流通している食品に放射性セシウムがどれくらいふくまれているかを調査する方法としてはつぎの2つがあります。

  • マーケットバスケット方式
  • 陰膳方式

「マーケットバスケット方式」は流通している食品を購入して、そのままの状態や簡単な加工・調理したあとの食品にふくまれる放射性セシウムの濃度を測定し、平均的な食生活でうける年間放射線を推定するものです。「陰膳方式」は、一般家庭で実際に調理された食事をあつめ、放射性セシウムの濃度を測定して年間放射線量を推定するものです。

消費者庁によると、流通している食品のなかには基準をこえたものはないとのことです。


■ 農地の改良

農地にふった放射性セシウムの多くは土壌の表層にとどまっています。そこで放射性物質を農作物が根から吸収しないようにつぎの対策を講じています。

  • 表土をけずりとる。
  • 表層と下層の土壌をいれかえる。
  • 米などは、養分となるカリウムが不足すると放射性セシウム濃度が高くなるので、カリウム肥料をまく。
  • 肥料・家畜飼料については、放射性セシウムの暫定許容値をもうけて管理する。
  • キノコ栽培では、菌床や原木に、放射性セシウムの指定値をもうける。

表土をけずりとっても放射性物質は完全にはとりのぞけず、4分の1はのこってしまいます。


■ 水産物

福島県沖では、試験操業をのぞき、すべての沿岸漁業および底引き網漁業が操業を自粛しています。

  • 海を回遊するカツオ・マグロ・サケ・サンマ:基準値をこえたものはない。
  • 表層に生息するシラス・コウナギ:2011年以降は基準値をこえるものはない。
  • 貝類・イカ・タコ・エビ・カニ・海藻:基準値をこえるものは現在はなくなった。
  • 淡水魚および海底ちかくに生息するカレイ・ヒラメ・メバル:基準値をこえるものがあるが、その割合はへってきた。


■ 放射性セシウムを指標にしている

放射性物質の濃度の測定は、実際には、セシウムのみについておこなっており、ストロンチウム・ルテニウム・プルトニウムなどのセシウム以外の放射性核種の測定はおこなっていません。

放射性セシウムはガンマ線をだすので短時間で濃度が測定できますが、ほかの核種は測定に時間がかかり、スピードがもとめられる食品の日常検査では対応がむずかしいというのがその理由です。

そこで放射性セシウムの全体にしめる割合を計算して、ほかの放射性核種の影響も考慮して、放射性セシウムの基準値を設定し、放射性セシウムが基準値を下まわれば、ほかも大丈夫だということにしています。




上記の基礎事項を理解し、東京電力と行政にだまされないように注意します。そして安全な食品を食べ、内部被曝を防止します。

福島県において、森林地帯は除染ができず、汚染された状態がつづいています。野生のものは食べることはできません。林業も絶望です。また漁業については風評被害もあり、再開は当面むずかしい状況です。

農産物については、安全基準を下まわっていれば食べることができます。積極的に食べることによって福島の農業の復興に協力することにもなります。これは人道的な立場からも重要です。

  • 東京電力と行政にだまされない。
  • 内部被曝を防止する。
  • 福島県の農業復興に協力する。

福島県以外の地域の汚染状況についてはあらためてしらべたいとおもいます。


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日本科学未来館 パネル展示「Lesson #3.11 7年目の選択」
期日:2018年2月28日~4月9日
場所:日本科学未来館 5階 常設展示場内