放射線の人体への悪影響を知り、測定・検査をつづけ、公開情報を継続的に監視し、安全な食品を食べるようにします。
放射線を大量にあびてしまうと、細胞のなかにある遺伝子が傷つきます。傷ついた遺伝子により癌細胞が将来つくりだされる可能性があります。

  • 放射線 → 遺伝子に傷 → 癌細胞


体の外にある放射性物質から放射線をうけることを「外部被曝」といいます。放射性物質がふくまれる食べ物を食べたり、息をすったりするときに放射性物質を体内にとりこんで、体のなかで放射線がでつづけることを「内部被曝」といいます。

  • 外部被曝
  • 内部被曝


外部被曝うけたとき、ある期間の放射線量の合計がわかる測定器を「積算線量計」とよびます。これには、ガラスバッジのような「バッジ式積算線量計」と、電子をつかった「電子式積算線量計」という2つの種類があります。バッジ式は、電池を必要としないので長期間つけて測定でき、電子式は、うけた放射線量がその場でわかるという特徴があります。

  • バッジ式積算線量計
  • 電子式積算線量計


内部被曝については、「ホールボディカウンター」という大きな測定装置をつかって放射性物質の量を測定します。また喉にある「甲状腺」という部分に超音波をあてて、放射性ヨウ素の影響をしらべる検査もします。放射性ヨウ素の影響による甲状腺癌の発生が、とくに子供たちにみられないか心配されて検査がつづけられています。

  • ホールボディカウンター
  • 甲状腺の検査医




一度に大量の放射線をうけると、多数の細胞が死滅し、吐き気や脱毛、白内障や皮膚障害などの健康被害がおきます。組織や臓器の細胞のダメージが大きい場合には影響がのちのちまでのこります。

  • 吐き気
  • 脱毛
  • 白内障
  • 皮膚障害


急性の障害がおこらない量の放射線をうけた場合でも、細胞のなかの損傷をうけた遺伝子(DNA)の修復に誤りがおこることがあり、そのような完全でない細胞が増殖すると癌などが生じます。




福島原発事故の放射能汚染により食品の安全性もおびやかされました。食べ物からの内部被曝をふせぐために、放射性物質の基準値が食品ごとにさだめられており、検査に合格したものしか出荷できないしくみになっています。

食品からうける追加の放射線量はどの性別・年齢層でも、年間1mSv(ミリシーベルト)以下となるように政府により決められています。年間1mSv は、国際的な食品の規格・基準をさだめているコーデックス委員会が指標としてしめしている値で、国際放射線防護委員会が、放射線防護対策をこれ以上講じても有意な線量の低減はできないとしている値です。

  • 安全基準:年間1mSv 以下

食品の安全基準値は、飲料水・牛乳・乳児用食品・一般食品に区分して、年齢や性別のちがいによる食べる量を考慮して、1kg あたりの Bq(ベクレル)に換算してさだめています。牛乳と乳児用食品は子供への配慮から、一般食品の基準値よりも2倍きびしい値にしています。

放射性セシウムの基準値
  • 飲料水 10 Bq/kg
  • 牛乳 50 Bq/kg
  • 乳児用食品 50 Bq/kg
  • 一般食品 100 Bq/kg

食品中の放射性物質については計画的なモニタリング検査がおこなわれ、その結果は各自治体のウェブサイトなどで公表されています。検査の結果、基準値をこえる食品に地域的なひろがりが確認された場合には、地域・品目を指定して「出荷制限」が設定されます。またいちじるしく高濃度の放射性物質が検出された場合には、出荷制限にくわえて「摂取制限」がおこなわれます。これらを解除するためには、国のガイドラインにさだめられた条件をみたす必要があります。

  • 出荷制限
  • 摂取制限


このような検査が適正におこなわれていれば安全な食品のみを消費者は食べることができます。

しかし行政は、情報の書き換えやデータの改ざんをおこなう場合があることが現在ではよく知られています。このようなことに気がつくために、上記のような基礎知識を身につけておくとともに、公開情報を継続して監視していく必要があります(注)。キーワードは継続です。


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原発事故による内部被曝について知る - 山口幸夫著『ハンドブック 原発事故と放射能』-

▼ 注1
日本科学未来館 パネル展示「Lesson #3.11 7年目の選択」
期日:2018年2月28日~4月9日
場所:日本科学未来館 5階 常設展示場内



▼ 注2
厚生労働省その他の資料やサイトをみていて、放射能汚染にかぎらず、農薬や化学肥料・添加物・公害・遺伝子組み換え・ゲノム編集、その他の汚染など、食品の安全が多方面からおびやかされていることがよくわかりました。わたしたち国民は、しらない間にわるいものを食べさせられている可能性があり、この点もふまえて身体をまもるために情報収集と監視をつづけていかなければなりません。

▼ 参考サイト
厚生労働省 東日本大震災「食品中の放射性物質への対応」