放射能汚染について基礎的な知識を身につけ、情報の完全公開をもとめ、まずは事実を知るようにします。
福島第一原発事故について日本科学未来館が展示・解説しています(注)。企画展示「Lesson #3.11 7年目の選択」のほか、シンポジウム「原発事故から7年、放射能汚染の状況はどこまで改善したのか」も開催されました。基礎的なことがらについては、展示場のテーブルのうえにおいてある資料で解説しています。


■ コイルと磁石で電気がうまれる
コイルのそばで磁石をうごかすと電気がうまれます(導線(金属の線)に電気がながれます)。コイルとは導線をぐるぐるまいたものです。自転車のライトもこの原理によってつきます。2つのコイルにはさまれた磁石を回転させると効率よく電気がうまれます。磁石の回転軸に羽をつけて回転効率をあげたものが「タービン」です。

  • タービンをまわす →〔磁石 + コイル〕→ 電気


■ 原子力発電所は「湯沸かし器」である
原子力発電所は、核分裂をおこして熱を発生させ、お湯をわかして蒸気によってタービンをまわします。原発の基本は「湯沸かし器」です。

具体的には、中性子を、ウラン235 にぶつけて核分裂をおこさせて熱を発生させます。同時に放射線も発生します。その熱をつかってタービンをまわします。

核分裂によって、核分裂生成物(使用済み核燃料)が生じ、これは、大量にあびると死亡するので「死の灰」とよばれます。死の灰は、数十万年以上にわたり放射線と熱をだしつづけます。フィンランドをのぞいてその処分方法を決めた国はありません。 原発が「トイレなきマンション」といわれるゆえんです。

  • 中性子 → ウラン235 が核分裂→〔熱と放射線〕→ 湯沸かし → タービンをまわす
  • 「死の灰」(使用済み核燃料)→ 「トイレなきマンション」


■ 原子の構造
原子は、原子核と電子からなります。原子核は、陽子と中性子からなります。
  • 原子核:陽子と中性子
  • 電子


■ 放射線とは
「放射線」とは光の仲間で、原子核が壊れるときなどに放出される高速の粒子や高いエネルギーをもった電磁波のことです。放射線にはさまざまな種類があり、アルファ線・ベータ線・ガンマ線・エックス線・中性子線があります。放射線を出す能力を「放射能」といい、放射線を出す物質を「放射性物質」といいます。

電球と光にたとえると、放射線は電球が出す光、「放射能」は電球が光を出す能力、「放射性物質」は電球そのものということになります。

  • 出すもの、出す能力、出るもの
  • 電球、光を出す能力、光
  • 放射性物質、放射能、放射線


■ シーベルト(Sv)とベクレル(Bq)
シーベルト(Sv)は、放射線が、人体にあたえる影響の強さをあらわす単位です。ベクレル(Bq)は、放射能の強さの単位であり、1秒間に崩壊して放射線をだす、原子核の個数をあらわします。

  • シーベルト(Sv):放射線が人体にあたえる影響の強さ
  • ベクレル(Bq):放射能の強さの単位


■ 食品の基準値
食品からうける放射線量の上限は、1mSv/年(1年間で1マイクロシーベルト)とされています。1Sv の 1000分の1が1mSv です。食品の国際規格を策定するコーデックス委員会(FAO と WHO の合同委員会)の指標をもとに設定されました。

(つづく)
 



上記の基本事項をふまえて、公開されたデータをチェックするようにします。データの監視は継続的におこなわなければなりません。

きのうもニュースがあったように、行政は、情報の書き換えをおこなうことがあります。そしてまことに残念ながら、科学者・技術者のなかにも情報の改ざんや捏造をする人々がいることが近年あきらかになってきました。実例として、理化学研究所・東京大学・京都大学などの事件が NHK その他により大きく報道されています。

したがって住民・国民は、公開情報の継続的な監視をしていかなければならず、放射能汚染関連情報についてはとくに注意が必要です。そのためには、公開情報に関して基本的なことは住民・国民がみずから理解できるようにならなければなりません。

原発問題は一見するとむずかしそうですが、日本科学未来館その他の展示や資料などを順をおってみていけば誰にでも理解できます。まずは事実をおさえるようにします。わからないことがあれば科学館のスタッフにきいてみましょう。すぐにおしえてくれます。

たとえば目の前にならんでいる食材が安全なのか、安全でないのか、みずから判断できたほうがよいのです。福島県産だから買わないということでは福島の復興をさまたげることになります。福島県産であっても、誠意ある厳密な検査をしている食品で、安全基準を下まわっていれば、検査をしていない食品よりも安全です。放射性物質は福島県外にも飛散していることをおもいだしてください。この点は、日本科学未来館でも強調していました。

未来館のシンポジウムではつぎのことに関しても説明・議論がありました。 

  • 食品検査法
  • 甲状腺がん
  • 帰宅困難地域の調査不足と住居解体
  • 事実隠滅
  • 情報公開
  • 第三者機関

わたしがインタビューした日本科学未来館のスタッフ(Ph.D.)はつぎのようにのべていました。

政治権力から影響をうけることなく厳正中立の立場で、正確な科学データを公表し、データにもとづいて考察をしています。

日本科学未来館のような国民にひらかれた科学機関のはたす役割はこれからますます大きくなっていきます。


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▼ 注
日本科学未来館 パネル展示「Lesson #3.11 7年目の選択」
期日:2018年2月28日~4月9日
場所:日本科学未来館 5階 常設展示場内