なぜ、世界から戦争がなくならないのか? それは、戦争がビッグビジネスだからです。
池上彰・「池上彰緊急スペシャル!」制作チーム著『なぜ、世界から戦争がなくならないのか?』(SB新書)は、軍需産業の実像をわかりやすく解説しています。



アメリカにどれくらい軍需産業に関わる企業があるのか調べてみました。その数は延べ 14 万社(米・政府監査院調べ)にもなります(注1)。

1位はロッキード・マーティンで売上額は約4兆 5000 億円です。ロッキード・マーティンといえば、日本ではロッキード社製の民間航空機のイメージがありますが、実際には兵器生産の割合が8割を占めています。ステルス戦闘機というレーダーに映らない戦闘機を造っているのもロッキード・マーティンです。

2位はボーイング。ボーイング767など私たちがよく乗っている飛行機でおなじみの会社です。でも、やはり兵器生産に力を入れていて、その売上額は3兆円を超えています。在日米軍のオスプレイもボーイングが製造したものです。将来的には、日本の自衛隊もオスプレイを買うことになっています。


こういう会社は、もし兵器の需要がなくなると商売あがったりです。はたらいている人たちの多くが失業し、景気も悪化してしまいます。したがってどうしても戦争をつづけなければなりません。戦争をすれば会社はもうかり、景気もよくなります。戦争はビッグビジネスです。

また軍事を専門とする「民間軍事会社」も成長してきています。その市場規模は、米「ニューヨーク・タイムズ」紙(2015年4月14日付)の報道によれば、推定で数千億~12兆円です。戦争の「民営化」もすすんでいます。

そして軍と軍需産業と政治家がしっかりむすびついて「軍産複合体」をつくり戦争ビジネスをささえています。




戦争をはじめるとき、国のトップが国民をみちびきます。


建国2600年、われらはいまだかつて戦いに敗れたことを知りません。この事績の回顧こそ、いかなる強敵をも破砕するの確信を生ずるものであります。(第40代日本国内閣総理大臣、東条英機)

大量破壊兵器で平和を脅かすような『ならず者国家』の思い通りにはさせません。我々は危機を乗り超え、平和のための仕事を継続していきます。我々は自由を守ります。我々は他国の人々にも自由をもたらします。我々は勝利します。(第43代アメリカ大統領、ジョージ・ブッシ)


リーダーの言葉に国民は熱狂します。そして戦争の流れが一旦おきると誰にも止められなくなります。
「戦争しかない!」
「そうだ!そうだ!」
エネルギーの巨大なかたまりがうまれます。これがおそろしいところ。
そこで異議をとなえると、
「非国民!」

新聞やテレビも大衆迎合をあおります。




それでは、戦争をなくすためにどんな努力をすればよいのでしょうか?

ドイツのとりくみが紹介されています。

高校の歴史の時間では、第二次大戦だけで半年間、約 40 時間をかけて勉強します。歴史をなまぶ2泊3日の社会科見学では、多数のユダヤ人たちがかつて収容されていた強制収容所を訪問します。首都ベルリンのもっとも目立つ場所には、ナチスに虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑があります。虐殺された約 600 万人の犠牲者を追悼するためにつくられました。戦争をつたえるためのアプリもあって、それがしめす場所には、街路にはめこまれた金属のプレート「つまずきの石」があり、かつてそこに住んでいたユダヤ人の名前や亡くなった場所などがきざまれています。ドイツ各地に5万個ほどあるのだそうです。このような戦争をつたえるためのさまざまなモニュメントがドイツ国内に約 5000 カ所あるといわれています。

日本でも、戦争をつたえるモニュメントをもっと設置すべきです。

本書は、戦争がなくならない基本的な理由を明快にしめしています。世界のビッグビジネスについて理解しておかなければなりません。


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▼ 参考文献
▼ 注1
ただし、これは 2010 年から 2014 年までの5年間にアメリカ国防総省が直接契約した会社が 14 万社ということで、それぞれに下請けの企業があるため、実際にはこれよりもはるかに多くの会社があります。