ねらいどおりに農作物や家畜の遺伝子を書きかえるゲノム編集技術の研究開発がすすんでいます。ゲノム編集食品をあなたは食べますか?
グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2018年3月号』の連載「ゲノム編集の3大インパクト」第2回では、「ゲノム編集食品が食卓に上る日」を解説しています。「ゲノム編集」の技術をつかえばねらいどおりに遺伝子を書きかえることができます。この技術の現状と未来について誰もが知っておく必要があります。




■ ゲノム編集技術
  • 「アグロバクテリウム」という土壌細菌をつかって “分子のハサミ” を植物細胞のなかへはこびます。
  • この “ハサミ” がねらった遺伝子を切り、遺伝子が書きかえられます。
“分子のハサミ” はどれも、長大な DNA 分子の何億、何十億の文字の中から特定の部分をねらうように設計されます。そのため、数%〜数十%という高い確率で遺伝子の書きかえが可能です。品種改良の効率が高まるというわけです。


ゲノム編集技術をつかえば、従来の遺伝子組換えよりも速く正確に品種改良をおこなうことができます。つぎのような研究開発が急速にすすめられています。

  • 超多収イネをつくる。
  • 除草剤に耐性をもつ農作物をつくる。
  • 超多収コムギ・トウモロコシ・ダイズをつくる。
  • 食中毒になりにくく、新成分に富むジャガイモをつくる。
  • 長持ちし、糖度の高いトマトをつくる。
  • アレルギーの原因となる物質を減らした卵やダイズをつくる。
  • 肉づきのよいウシやブタ・ヒツジ・ヤギなどをつくる。
  • 肉づきのよいマダイをつくる。
  • おとなしく養殖しやすいマグロをつくる。

これからは、人間のおもうままに農作物と家畜を改良することができます。農作物と家畜は人間が利用する “物質” でしかなく、人間がつくりだすものです。そだてる農業からつくる農業への転換です。

植物と動物は、人間にとって都合のいいようにコントロールすればよいのです。実用化をめざして内外の大企業も努力しています。ゲノム編集食品が食卓にのぼる日は目前にせまっています。

しかしその食品の安全性はどうでしょうか? 大企業は利潤を追求するのみです。人間の健康や野生の動植物・自然環境などに予期せぬ影響があるかもしれないと懸念する人もいます。現在のところ議論がすすんでいるだけで何の規制もありません。人間の “暴走” がいよいよはじまりました。


▼ 関連記事
遺伝子をかきかえる -「“デザイナーベビー”は産まれるのか」(Newton 2018.2号)-

▼ 参考文献
『Newton 2018年3月号』ニュートンプレス、2018年3月7日発行
オルダス=ハクスリー著・黒原敏行訳『すばらしい新世界』 (光文社古典新訳文庫)光文社、2013年6月20日