どのように宇宙は変化していくのでしょうか。思考の前提として宇宙は重要です。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2018年3月号』の特集では「宇宙を破滅に導く真空崩壊」について解説しています。




ヒッグス粒子の発見以降、実際に観測された質量と、理論的に予想されたヒッグス粒子の質量の相違点が整理されました。その結果をもとに、宇宙の真空のエネルギーを計算すると、現在の真空が、あらゆる状態の中で最もエネルギーが低い真空ではない可能性がでてきました。(中略)これは、水が氷に変化するように、真空の状態がよりエネルギーの低い “真の真空” へと変化してしまう可能性があることを意味します。このような真空の状態変化が、「真空崩壊」なのです。


2012年、世界最大の加速器「LHC」をつかった実験により、質量の起源にかかわる素粒子「ヒッグス粒子」が発見されました。ヒッグス粒子の性質をつぶさにしらべた結果、宇宙の真空の状態が劇的に変化する「真空崩壊」という現象がおきる可能性があることがわかりました。

これにより、原子さえも崩壊し、宇宙の法則はかわり、現在の宇宙は破滅します。地球も一瞬でばらばらになってしまいます。

宇宙のどこかではすでに真空崩壊がおきているという仮説もあります。わたしたちが知っている宇宙は電磁波(光など)で観測した宇宙ですが、実際には、この宇宙の外側にも宇宙空間はさらにひろがっていて、高速をうわまわる速度で膨張していると現在ではかんがえられています。その宇宙のどこかで真空崩壊がおきていたとしてもおかしくありません。

また近年提唱されている「超弦理論(超ひも理論)」によると、性質のことなる真空が宇宙には無数あり、真空の性質がことなればおなじ素粒子でもまったくちがう性質をもちます。それらを「ちがう宇宙」というならば、無数の宇宙が存在しているということになります。無限にひろがる宇宙のあちこちで真空崩壊が生じており、ことなる無数の宇宙が存在しているといってもよいでしょう。

わたしたち人間がしっている宇宙は宇宙のひとつにすぎないのかもしれません。そしてそれは、人間固有の感覚器官と情報処理のしくみに依存した感覚世界でしかないのかもしれません。

いずれにしても宇宙は、わたしたち人間の思考の基本的な枠組みをつくりだしています。宇宙について認識をふかめておくことは、あらゆる情報処理の大前提として必要なことです。


▼ 参考文献
『Newton 2018年3月号』ニュートンプレス、2018年3月7日発行