情報処理をすすめるためには情報のネットワークも必要です。情報処理と同時に情報のネットワーク化もしたほうがよいです。
東京都立中央図書館が「『東京』いまむかし」という企画展示をしています。鉄道網の発達によって東京各地にひろがったにぎわいの様子をいまとむかしを比較しながら紹介しています。

なかでも印象的だったのが「東京動脈」(栗山貴嗣製作・所蔵)です。


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東京動脈」(交差法で立体視ができます)


これは、東京の地下鉄・JRの路線を3次元であらわした模型であり、地上部・地下部ともに非常に正確にすべての路線を再現しています。各路線のシンボルカラーで各路線をしめしているのでわかりやすいです。

東京動脈は、ひと目みればあきらかなようにきわめて複雑です。しかし決してこんがらがっていません。よくできています。

これは、インターネットに似ているのではないでしょうか。路線は通信ケーブル、駅は中継装置です。

  • 路線:ケーブル
  • 駅 :中継装置

インターネットでは、ケーブルをつかって情報(の信号)をはこんでいます。中継装置でふりわけられて目的地に正確に情報がとどきます。

一方、東京動脈の路線は何をはこんでいるのでしょうか。いうまでもなく人です。人は何をはこんでいるのでしょうか。物資や食料ではありません。情報をはこんでいます。人は、駅でのりかえて勤務先などの目的地に到着し、そこで情報をつたえたり情報を処理したりしています。つまり仕事をしています。

けっきょく鉄道は情報をはこんでいるのであり、東京動脈の本質は通信網(ネットワーク)です。

このようなことから、情報処理をすすめるためにはよくできたネットワークも必要だということがわかります。情報処理をすすめると同時に情報のネットワーク化の努力もしたほうがいいということです。ネットワーク化により情報の場の力が生じます。

インターネットと東京動脈の類似は単なる類似をこえて、現在の情報産業あるいは情報社会の重要事項をおしえてくれています。




会場の第1展示室「鉄道網の発達と賑わいの広がり」では、鉄道各社がおこなった沿線開発の歴史を紹介しています。第2展示室「各地の賑わい」では、「花」「水」「寺社」のテーマごとに各地の様子を紹介しています。

展示や解説書をみていると、東京には道路網もありますが、鉄道網の方が、その開発に大きく寄与していることがわかります。

路線のネットワークとともに駅およびその周辺の開発によって東京は発展してきました。駅は、それぞれの地域の拠点であり、東京動脈からみるとサブシステムともいうべき存在です。サブシステムができてくると、東京動脈は単なるネットワークではなくなり、サブシステムのネットワークに成長し、そのけっか東京は、巨大な階層構造を構築するようになりました。逆にいうと、超巨大な現在の階層構造を維持していくためには堅固な「動脈」が必要なわけです。

このような階層構造になったネットワークを理解するためのモデル(見本)としても鉄道網の発達はとても参考になります。
 

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▼ 注
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企画展示「『東京』いまむかし~鉄道網の発達による賑わいの変遷~」