狩猟採集をしていた人間は、農耕牧畜を開始し、自然に手をいれ、自然を利用することをおぼえました。
『ナショナルジオグラフィック 日本語版』2018年1月号の特集で「耕す人」と題して日本の農業の現場を紹介しています。




写真家の公文健太郎さんは、農業の現場を記録するプロジェクトを6年前からつづけているそうです。以下の写真が掲載されています。


  • 福井県大野市:田植え
  • 茨城県古河市:カボチャ畑
  • 鳥取県北栄町:ブロッコリを収穫
  • 鹿児島県日置市:鶏を絞める
  • 和歌山県かつらぎ町:渋柿の串柿
  • 高知県四万十町:ショウガを植える
  • 岩手県盛岡市:色づき始めたリンゴ
  • 山形県新庄市:雪の中に保存しておいたギャベツ
  • 高知県四万十町:水田の石垣を積み直す
  • 佐賀県白石町:コンテナに入れられたタマネギ
  • 秋田県三種町:ジュンサイを摘む


そもそも農業のはじまりは?


初めは取ってきた草の実が家の近くでこぼれ、やがて芽を出して育って実をつけたのを見たことだったろう。そこで一定の場所にその草の実を植えて待つことにした。あるいは狩った動物の仔を連れてきて餌をやって育てた。やがて仔は食べられるサイズになった。


約1万年前、このようにして、狩猟採集の生活をしていた人間は農耕牧畜を生活のなかにとりいれはじめました。その後、狩猟採集の割合がへり、農耕牧畜の規模が拡大するにつれて、人々の生活様式は激変し、人間は、あらたな歴史・文化をつくっていくことになります。

人間は、自然に手をいれ、自然を利用することをおぼえました。その結果うまれてきたのが「半自然」あるいは「二次的自然」です。これは、本来の自然(天然)ではありませんが人工でもありません。人間と自然とが相互浸透的になった領域であり、人間と自然の合作といってもよいでしょう。


180122 農耕牧畜
図1 農耕牧畜が半自然をうみだした


図1のモデルからあきらかなように、自然の法則に支配されて自然の体系のなかでただ生かされているのではなく、みずからの意志をはたらかせることができるあたらしいシステムを人間はつくりはじめたのです。農耕牧畜や農業を産業の一分野とみなすのはせまくかたよった見方でしかありません。

今回掲載されている素朴な写真の数々をみながら、農業をはじめたころの人間の姿を想像してみるとよいとおもいます。


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▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック 日本語版』 日経ナショナルジオグラフィック社、2017年12月30日