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写真1「南方マンダラ」のホログラム
(平行法で立体視ができます)
ファイル(情報のひとまとまり)をつくったら、つぎにやることはファイルの構造化(ネットワーク化)です。より高次元の情報処理をおこないます。
生誕 150 年記念企画展「南方熊楠 -100年早かった智の人-」が国立科学博物館で開催されています(注1)。会場の第6コーナー「知の構造を探る」では「熊楠の情報処理」を解説しています。いよいよ、情報処理がきたかといった感じです。

書籍をよんで、フィールドワーク(旅行)をして、ブログ記事(ファイル:情報のひとまとまり)を作成して、そのあとはどうすればよいのか? そのあとは、ファイルの構造化(ネットワーク化)です。

まず、課題に関連する記事をブログからピックアップします。ブログには、カテゴリやタグ、キーワード検索の機能があるのでピックアップが容易にできます。そして記事のタイトルをポストイット(付箋)に記入します。それらを、ノートや用紙のうえに空間配置します。チームワークでおこなうときには模造紙やホワイトボード上に配置します。もっともすわりのよいポストイットの配置をみつけて、それぞれのあいだに関係線を記入すれば構造化ができます。

こうして、読書、フィールドワーク(旅行)、ファイル、構造化という一連の流れができあがります。

  • 読書
  • フィールドワーク(旅行)
  • ファイル(情報のひとまとまり)作成
  • 構造化(ネットワーク化)

あとは、構造にもとづいて文章化なりプレゼンテーション(口頭発表)をおこないます。




熊楠は、キーワードの構造化(ネットワーク化)おこない、図解をのこしています。構造化することにより、ファイルをつくっていたときよりも情報処理は高次元化します。


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図1 熊楠の構造図(ネットワーク図)

図1の右図は熊楠がつくった図解です(ただし赤色の数字と線は、わかりやすくするために今回の企画展の主催者が記入したものです)。用紙のうえにキーワードを空間配置しています。キーワードどうしを線でむすんだり、グループ化するなどして、連続した話題と、“島” のように独立した話題とがあらわされています。図1の左図は、熊楠の図をさらにわかりやすくするために今回の企画展の主催者が作成した図解です。

今日では、ポストイットがあるので、図1の左図のような図解(構造図)が誰でもつくれます。

このような図解では、ポストイット1枚は点的な情報「点情報」になります。ファイル(ブログの1記事)は構造のなかでは点情報として機能します。この点情報がしっかりしていれば構造やネットワークもいいものができます。しかし点情報のできがそもそもわるかったら、いくら構造をつくってもうまくいきません。ファイルをつくる日々の努力が大切です。


171231 自律分散システム
図2 点情報と構造のモデル

点情報と構造をモデル的にあらわすと図2のようになります。点情報は白丸でしめされ、それぞれの点情報は関係線でむすばれています。この構造は自律分散システムになっていて、今日のインターネットがまさにこのようなシステムになっています。インターネットは情報の超巨大構造です。

今日、情報化社会になり、情報処理の観点から熊楠の仕事をとらえなおすことができるようになりました。これが、今回の企画展の最大の特色といってもよいでしょう。熊楠がもし今日いきていたら、ブログやインターネットの大きな有用性にすぐに気がつき、これらを縦横無尽につかいこなしたにちがいありません。

熊楠は、自然だけでなく、民話や民俗・歴史など人文系の情報もとりあつかい、博物学的な情報処理をおこないました。情報処理の観点にたつと、理科系と文科系といったふるい分類法は意味をなしません。熊楠は、多様で膨大な情報を処理できる情報処理の実践者でした。




写真1は、この世でおこる現象の関係をえがいた「南方マンダラ」とよばれる図です。今回の会場の入り口すぐのところに展示してあります。熊楠は、このような図解をいくつかのこしています。普通にみると平面にしかみえがませんが、実際には、縦・横のほかに奥行きもある立体のものと見るようにと熊楠は説明しています。写真1はステレオグラムになっています。会場では、ホログラムをつかってこの図を立体モデルとして見えるようにしてあります。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -

わたしがつくった図2もステレオグラムになっていて、平行法でも交差法でも立体視ができます。平面(2次元)では、関係線が交差してごちゃごちゃしていますが、立体視をすると関係線は交差せず、全体の構造がすっきりとわかります。

熊楠は、平面(2次元)で複雑な情報を表現するのには限界があることに気づいていました。多様性にあふれる世界をとらえるためには立体(3次元)で見るあるいはイメージすることが必要です。構造化することによって2次元そして3次元へと、情報処理は文字どおり次元が高くなります(注2)。


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▼ 注1
南方熊楠生誕150周年記念企画展「南方熊楠-100年早かった智の人-」
場所:国立科学博物館・企画展示室(日本館1階)
会期:2017年12月19日~2018年3月4日



▼ 注2:参考文献
川喜田二郎著『発想法』(中公新書)中央公論新社
※ ファイルを構造化する技法あるいはモデルとして参考になります。3次元構造をつくるあるいはイメージするためにはファイルのグループ編成(グループ化)が必要です。