IMG_1030_1
国立科学博物館・地球館3階の展示「大地を駆ける生命」
(平行法で立体視ができます) 
動物を順番にみていくと、霊長類には、立体視ができることと、手が発達しているという特徴があることがわかります。
国立科学博物館・地球館3階では「大地を駆ける生命」として哺乳類の剥製がたくさん展示されています。さしずめ、剥製をつかった大きな立体 "動物図鑑" といったおもむきです。

ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -

わたしはここで、動物たちの目と手足に注目しました。


IMG_0759_60
ヒトコブラクダ(偶蹄目/ラクダ科)

たとえばヒトコブラクダは、2つの目は顔の側方にあり、手はなく4本足です。それぞれの目が側方についているので視野が非常にひろくなっています。視野には、片目で見ることのできる範囲「単眼視野」と両目で見ることのできる範囲「両眼視野」があり、ラクダのような草食動物は単眼視野がひろくなっています。



IMG_0741_2
ユキヒョウ(食肉目/ネコ科)

ユキヒョウでは、両目が顔の前方についているので、単眼視野はせまくなり、両眼視野がひろくなっています。両眼視野は立体視ができる範囲です。左右の目にはそれぞぞれ独立に光がはいってきますが、脳が、それらの視差を検出し、情報を融合して立体画像をつくりだします。ユキヒョウは、ラクダよりも視野はせまくなりますが、そのかわり立体視ができるということになります。



IMG_0701_2
チンパンジー(霊長目/ヒト科)

チンパンジーの目は顔の前についていて立体視ができ、また手が発達しています。チンパンジーは樹上生活をしているので、たとえばこちらの枝からむこうの枝にとびうつるときに、むこうまでどのくらいの距離があるのかを目測し、そして手で枝をつかんで移動します。チンパンジーになると、立体視ができるだけでなく、手もつかいこなせるということです。



IMG_0695_6
ボルネオオランウータン(霊長目/ヒト科)

オランウータンについてもチンパンジーと同様なことがいえます。人類をふくむ霊長類は、立体視ができることと、手が発達しているという特徴をもちます。立体視ができるので対象までの距離がわかり、それを手でつかむことができるのです。

わたしたちヒトは、立体視をしながら膨大な情報を内面にインプットしています。一方で、手をつかって絵をえがき、文字を書き、キーボードをうちます。すなわち目はインプット器官、手はアウトプット器官です。動物の進化によってこのようなことが生じてきたことが展示標本を順番に見ていくとよくわかります。

171121 目と手
図1 情報処理からみた目と手


人類の進化というと脳の進化に注目があつまりがちですが、このように、目や手の進化も見のがせません。インプット・プロセシング・アウトプットの三拍子がそろってこそ情報処理はすすみます。目のつかいかた、手のつかいかたをあらためてとらえなおし、これらの "性能" をたかめるための訓練をすることが大事だとおもいます。


▼ 関連記事
体のつくりからライフスタイルを想像する - 草食動物に秘められた体のふしぎ(Newton 2017.5号)-
手・指をつかってアウトプットする - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(4)-
手をつかいこなして道具をつくる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(5)-
イメージをえがき、手をつかってアウトプットする - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(まとめ)-
個体発生のしくみをしる - 企画展「卵からはじまる形づくり 発生生物学への誘い」(国立科学博物館)-
情報処理能力を高め、空白領域にチャレンジする - 特別展「生命大躍進」(まとめ&リンク)-

▼ 注
国立科学博物館・地球館3階「大地を駆ける生命」