わたしたちがいる宇宙は、無数にある宇宙のひとつにすぎないという仮説が提案されています。宇宙の階層構造に注目することが大事です。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2017年12月号の連載「科学革命前夜」第3回(終)では、「マルチバース宇宙論」を特集しています。




かつて人類は太陽系や銀河系が世界のすべてだと信じていましたが、太陽も銀河系も、無数にある恒星や銀河の一つにすぎないことがわかりました。そのような歴史があるのに、宇宙だけは一つしかないと考えるのは、逆に不自然ではないでしょうか。

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宇宙は、今から約138億年まえに誕生、誕生直後に宇宙の急膨張「インフレーション」がおこったと想像されています。この「インフレーション理論」(インフレーション宇宙論)では、誕生直後の宇宙において、10の数十乗分の1秒といったほんの一瞬に、ごく小さな点のような領域が広大な宇宙へとひきのばされたとかんがえます。そしてこのインフレーションのあとに灼熱宇宙「ビッグバン」の状態になり、そのご宇宙は冷却していき、恒星やその集団である銀河が生まれました。

しかしインフレーションは全体としてはおわることがなく、どこかの場所でずっとつづいているとされます(永久インフレーション)。そうだとすると、わたしたちの宇宙のそとでは宇宙が無数に誕生しつづけているということになります。

従来、宇宙のことは、英語では「ユニバース(universe)」(uni-: 単一の)といってきましたが、これに対してあたらしい宇宙論では「マルチバース(multiverse)」といいます。わたしたちがいる宇宙は、無数にある宇宙のひとつにすぎないというわけです。

これは、わたしたちをおどろかせるかなり衝撃的な仮説といってよいでしょう。おもしろい宇宙論がでてきました。



わたしたち人間は、世界の認識を、地域から大陸へ、地球へ、太陽系へ、銀河系へ、宇宙の大規模構造へと拡大してきました。そしてマルチバースです。

これらをつらぬく基本構造は階層構造です。わたしたちの世界あるいは宇宙は階層構造によって基本的になりたっています。マルチバースは発展途上の仮説ですが階層構造からみると自然なアイデアです。

階層構造に注目することはとても重要なことです。地球上の物事を認識するときにも階層構造が有用です。階層構造をみて、またそれをつかっていくことがあらたな発想や問題解決のために役立ちます。




『Newton』では、「科学革命前夜」と題して、「ダークマター」「高次元空間」「マルチバース」について解説してきました。これらはいずれも、これまでのわたしたちの常識とはことなるものでした。

しかし歴史的にみれば、常識はいつかかならずくつがえされます。常識はやぶられるものです。それが進歩です。あたらしいアイデアは常識の延長線上にはありません。

わたしたちは、従来の常識や知識を身につけなければなりません。しかしそれにはとらわれないようにしなければなりません。このようないっけん矛盾することをやらなければならないのが人間の存在です。従来のやり方を習得しても、その問題点をみつけてそれをうちやぶり、そして創造するということでしょう。「科学革命前夜」からも「守破離」がよみとれました。


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▼ 参考文献
『Newton』(2017年12月号)、ニュートンプレス、2017年12月7日発行