仏像の世界は実に多様です。気に入った仏像とじっくり対面してみるとよいでしょう。
興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」が東京国立博物館で開催されています(注1)。おでましになった仏像のなかで、大日如来、阿弥陀如来、聖観音菩薩、地蔵菩薩、不動明王は多くの来館者の目にとまり、とくに人気がたかいようです。

大日如来は、最高かつ絶対の存在で、密教世界の真理そのものを象徴的にしめしています。釈迦をふくむすべての仏は大日如来が姿をかえてあらわれたとされます。密教の世界観は、大日如来を中心にして、金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅によってしめされます。 

阿弥陀如来は、十方世界のひとつの西方浄土(極楽浄土)の教主です。極楽浄土で説法する像や、極楽浄土からこの世へ往生者をむかえにくる像などがあります。阿弥陀信仰では極楽往生をもとめます。  

観音菩薩は、「観音さま」としてとても多くの人々に したしまれ、もっともひろく信仰されている菩薩です。さまざまに姿をかえてあらわれ、わざわいや罪から衆生をすくいます。聖観音(しょうかんのん)菩薩は、「六観音」(十一面観音、如意輪(にょいりん)観音、馬頭観音、准胝(じゅんてい)観音、千手観音)のなかのひとつです。

地蔵菩薩は、地球のすべての生きものをそだてる大地のめぐみをあらわします。インドのバラモン教の地母神プリティビーに由来するといわれています。サンスクリット語で「クシティ・ガルバ」といい、「大地を母胎とするもの」の意であり、「地蔵」と意訳されました。

菩薩は、「自分のことだけをねがっていても願望は達成されず、周囲(環境)を改善するおこない(徳をつむおこない)をしなければ、人生は改善されない」とおしえています。自分自身と周囲(環境)をつねにセットにしてとらえていかなければなりません。

171023 菩薩

不動明王は、空海が日本に紹介したとされ、「お不動さん」の名で したしまれ、非常に人気のある仏像です。大日如来が衆生を教化する際に、通常の姿のままでは教化できないので忿怒相をもってあらわれました。おそろしい顔をしてあらゆる悪を退散させます。

不動明王をみつめていると憎しみや怒りがしずみます。感情のコントロールができます。ひいては心身のパワーアップになります。感情をコントロールできるかどうかは人間にとってとても大きな課題です。人間関係のほとんどのトラブルは感情的なものです。

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展覧会場にいって、人気のある仏像にとらわれる必要はかならずしもありません。気にいった仏像とじっくり対面してみればよいとおもいます。


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会期:2017年9月26日~11月26日
※ 撮影は許可されていませんでした。
※ 音声ガイドは有料(520円)です。