地震予知はできません。日本列島のどこにいても不意打ちで大地震がおそってくる可能性があります。確率予測にとらわれずにそなえることが必要です。
政府の中央防災会議作業部会は、地震予知を前提とする防災対応の見直しを柱とする報告書案を了承しました。地震発生時期を「確度高く予測することは困難」として直前予知を否定しました(注1)。ようやく、地震予知(地震の発生日時・場所・規模を事前に知ること)はできないことがみとめられました。

一方、政府の地震調査研究推進本部は、特定の地点が 30 年以内に地震に見舞われる確率をしめす「全国地震動予測地図」の 2017 年版(1月1日時点)を公表しています(注2)。これは、大地震がおこる確率をしめした日本地図であり、建物が倒壊しはじめるとされる震度6弱以上では、関東・東海から近畿・四国にかけての太平洋側において地震発生確率が高くなっています。

ここで重要なのは、確率は単なる計算であり、予知ではないということです。確率は、当たることもあるし、はずれることもあります。地震発生の確率がひくいところでも大地震がおきる可能性があります。実際、平田直・地震調査委員長(東京大教授)は、「自分の所は安全だと思わず、日本はどこでも強い揺れにあう可能性が高いと考えて欲しい」とのべています(注3)。

まずは、統計・確率の基本について知る必要があります。
統計そして確率予測 -『統計のきほん』 (Newtonライト)-

全国地震動予測地図は、"予知図" ではなく単なる確率分布図にすぎません。わたしはこの地図は、確率のひくい地域の人々を油断させてしまうので、防災・減災にとって有害だとかんがえています。確率のひくい地域でも不意打ちで大地震がおそってくる可能性があります。それを予知することはできません。

日本列島のどこにいても大地震はおそってきます。にげ場所はありません。したがって大地震がいつおこってもいいようにそなえておかなければなりません。確率分布図にとらわれることなく、今からそなえておくことが必要です。


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大地震にそなえる -「超大型の関東地震は、従来の想定より頻繁におきていた!?」(Newton 2017.8号)-

▼ 注1
南海トラフ地震 予知前提を見直し 政府作業部会が防災対応で報告書案(産経新聞、2017年8月25日)
南海トラフ、予知困難=前兆で住民避難促す-中央防災会議(JIJI.COM)

▼ 注2
30年以内に大地震、太平洋側で確率高め 予測地図公表(朝日新聞デジタル、2017年4月27日)

▼ 注3
地震調査委員長がそのようにのべるのであれば、どうして、このような誤解をまねく地図をつくるのか。このような有害な地図作成の研究よりも、防災・減災のための問題解決の実践こそが必要であり、そのために政府は予算をつかわなければなりません。
参考記事:分析的研究か、問題解決か - 脚気の例と仮説法 -