統計と確率の基本を知って、確率的マイナス思考から脱却するようにします。
『統計のきほん』 (Newtonライト)は、統計と確率の初歩・基本についてわかりやすく解説した初心者むけ入門書です。数学の知識がなくても理解できます。情報産業社会になった今日、統計と確率の基本について誰もが知っておかなければなりません。




学校の男子生徒たちを、身長2センチ刻みに分け、それぞれ1列に並ばせてみましょう。すると(中略)、左右対称の山のような形がみえてきます。このように、各データが山型になる分布を「正規分布」といいます。

「大多数のデータが平均の周囲のどれくらいの範囲に集まっているか」をあらわす特性値を「標準偏差」といいます。

正規分布の形は、「平均値」と「標準偏差」という二つの特性値だけで決まります。

要素Aの値が大きくなるにつれて要素Bの値も大きくなる《または小さくなる》といった関係にあるとき、要素Aと要素Bは「正の《または負の》相関関係にある」といいます。

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統計において正規分布はとくに重要な分布です。標準偏差が大きいほどグラフはなだらかになります。相関関係からは方程式をみちびきだすことができます(注1)。

本書では、事例として以下について簡単に説明してます。
  • ウソや八百長をみぬく
  • 学校の筆記試験や受験でつかわれる偏差値
  • プロ野球選手には春〜初夏生まれが多い
  • ワインの価格予測
  • 収入と寿命の関係
  • 保険料のきめかた
  • 世論調査
  • 政権支持率
  • 選挙と当選確実
  • サイトのデザインを改善
  • 魚の数の調査
  • 新薬の効果
  • データマイニング
  • ビッグデータ

そして統計は、確率の計算に直結していきます。ここが重要なところです。多くの人々は確率に関心があるのではないでしょうか。

たとえばコインをなげたとき、表がでるコインの枚数はどうなるでしょうか? 2枚なげたときは表は1枚、10枚なげたときは表は5枚、100枚なげたときは表は50枚になるでしょうか? そうはならないことを誰もが知っています。

しかしコインの枚数を2枚から徐々にふやしていくと、グラフの形は正規分布にちかづいていきます。これが統計的な理解です。

もし、表と裏がでる確率がひとしいならば、コインを10枚なげたときに表は5枚でるはずです。しかし実際には、表と裏が5枚ずつでる確率はひくく、表がでる確率は計算すると約25%しかありません。「表は5枚」という予測をしたとすると、約25%の確率で当たりますが、約75%の確率ではずれます。「表は5枚」という予測は約25%しか信頼できず、この約25%を「信頼度」といいます。

こうして確率では、さまざまな状況のおこりやすさを計算します。これは確率による未来予測になります。しかしこれは、当たることもあるし、はずれることもあるということに注意してください。たとえば天気予報でも、当たることもありますがはずれることもあります。確率は計算結果であって予知ではありません。




今日、社会のあらゆる分野で確率がつかわれています。一般の人々にも "確率的思考" が浸透しています。しかしデータをあつめて計算することはせずに、無自覚のうちに確率的思考をしている人が多いのではないでしょうか。

たとえば以下のような事例がありました。

山田太郎さん(仮名)はピアノとバイオリンを小さいときからならっていました。ピアノとバイオリンの両方をひいていましたが、ピアノが大好きだったので将来はピアニストになると決めていました。

しかしあるとき、「ピアノで食べていくのはむずかしいからバイオリンに専念した方がよい。バイオリンなら管弦楽団に就職する道があるから」と周囲の人にいわれピアノはやめさせられました。太郎さんは悲しくて悲しくて来る日も来る日も泣きつづけました。(注2)

確率にもとづけば、バイオリニストになるよりもピアニストになる方がむずかしいです。その確率的 "マイナス思考" を親たちは子供におしつけてしまいました。

あるいはイチローは、子供のときからプロ野球選手になろうとおもっていました。しかし親戚の人に、「どうせ、二軍でおわる人が多いんだからやめた方がいいよ」といわれました。確率では、親戚の人のいうとおりです。しかし現実はちがいました。

またある中学生は、「将来は、恐竜学者になりたい」といったら、「それはむずかしいよ。どうやってメシをくうんだ」と親にいわれてやめさせられました。確率では、サラリーマンになるよりも恐竜学者になる方がむずかしいです。

あるいはある女子高生は、「理科系にすすみたい」といったら、親と先生から、「女の子が理科系にいってもしょうがないよ」といってやめさせられ、芸術系にいかされました。確率的には理解系では、男子にくらべて女子は不利です。しかし実際には、その生徒には才能があったのです。




多くの大人たちが、データもなく、計算もしていないのに、確率のひくさを漠然とおもいうかべて、マイナス思考をしてしまっているようです。統計・確率を勉強していない人ほどその傾向がつよいです。それによって、場合によっては子供の才能をつみとってしまっています。確率で人生がきまるのでしょうか?

マイナス思考のベースには "確率的思考" があるようです。確率をのりこえる、プラス思考にきりかえることは多くの人々の課題であるといえるでしょう。まずは、統計・確率の基本を知るのがよいのではないでしょうか。


▼ 注1
統計をつかうと、データにもとづいて一般的な傾向や規則をあきらかにすることができます。傾向や規則の究極は法則といってもよいです。これは帰納法です。これに対して、 一般的な前提から個別の結論をみちびきだす、具体的には、方程式に数値を代入して解をえるのが演繹法です。

▼ 注2:関連記事
プラス思考にきりかえて若い人の芽をつみとらない

▼ 注3
確率は、偶然か必然かといった大問題をかんがえるときにも重要です。

▼ 参考文献
『統計のきほん』 (Newtonライト)ニュートンプレス、2017年8月5日
『統計と確率ケーススタディ30 基礎知識と実戦的な分析手法』(Newton 別冊)ニュートンプレス、2014年4月28日