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図1 ウエイターの手の上のトレイに右の中から選択してのせてください
空間配置を認識することは、物事の意味をよみとるためにも重要です。
図1は、セキュリティ向上のために最近よくつかわれている画像認証の一例です。パスワードだけではセキュリティ上よわいので画像認証が導入されるようになってきました。

これは、コンピューター(あるいは人工知能)には、空間認知能力とイメージから意味をよみとる能力がないことを利用したセキュリティ・システムです。コンピューターは計算は得意ですが、空間と意味については不得意です。

人間でしたら、オレンジジュースがはいったグラスを選択してトレイにのせればよいと簡単にわかりますが、コンピューターにはそれができません。

このようなことからこれからの時代は、計算はコンピューターがやって、空間認知と意味認識は人間がやるという傾向がつよくなるとかんがえられます。空間認識を必要とする仕事は人間にとってますます重要になってくるでしょう。あらたな創造の源泉がここにあるかもしれません。

空間認識ができるということは、物事のもっともすわりのよい場所・位置がわかるということです。トレイのうえには飛行機やトラではなく、オレンジジュースがはいったグラスが配置されなければなりません。

物事にも人間にも適切な空間配置があります。自分の居場所がある人は生きていけます。しかし場所をうしなうと不安定になります。やっていけません。場所をさがすことは大事なことです。

また空間配置からストーリーをよみとることもできます。たとえばつぎのように。

ここはレストランであり、オレンジジュースをウエイターはトレイにのせて客席まではこんでいきます。グラスが1個であることからお客さんは1人でしょう。暑い夏は、氷のはいったつめたいオレンジジュースが一番です。そのあとでメインの料理を食べます。

このように、空間配置を認識することによってストーリーが想像できます。するとオレンジジュースの意味もわかってきます。空間配置とストーリーと意味は密接にかかわっています。空間配置が意味をうみだし、意味には空間配置がともないます。

画像認証システムからこのようなことがよみとれました。こらからの情報化社会を生きていくうえで、簡単なことのようですがおもっている以上に空間を認識することは重要なことだとおもいます。


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