有性生殖により子供が生まれ、親は死んでいきます。多様性が生じ、地球環境の変化に適応できます。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』( 2017.9号)のシリーズ「生物の宿命」では、死(寿命)が生じるきっかけとなった「有性生殖」について解説しています。




生物は「有性生殖」を行うようになったことで「寿命」をもちはじめたという説がよく知られている。(中略)

有性生殖を行う生物の子供は、父親と母親それぞれから遺伝子を受けつぐ。同じ種類の生物でも、遺伝子に多様性をもつことで、環境の変化に対応できるように進化したのだ。


ある生物において、たとえば暑さには適応できるが寒さには適応できないグループがいます。その逆に、 寒さには適応できるが暑さには適応できないグループがいます。

たとえば地球温暖化が極端にすすんだ場合は、前者は生きのこるでしょうが、後者は絶滅してしまいます。あるいは氷河時代が再来して気温が極端にさがった場合は、前者はいなくなり、後者は生きのこるでしょう。

このように、おなじ種のなかであっても多様性があると、環境の変化に適用できるものがいるので、その種全体が絶滅してしまうということはありません。

これが多様性がもしなくて、みんな同じであったなら、たとえば暑さには適応できても、氷河時代になったら全滅してしまうということがおこるのです。




有性生殖では、雌雄のペアから子供が生まれます。子供は、父親と母親それぞれから遺伝子をうけつぐので、父親と母親に似ているけれども、父親とも母親とも違う個体(個人)になります。多様性がうまれる仕組みがここにあるのです。雌雄のくみあわせは無数にあるので多様性がうまれる可能性はとても大きいです。

しかし無性生殖で増殖する生物では、増殖の前後で遺伝子にちがいはみられず、多様性が生じません。このような生物は、環境が大きく変化するとたちまち全滅してしまいます。

したがって今日まで生きのこってきたほとんどの生物は、雌雄のペアをつくる能力をもったものということになったのです。

また子供をうむ仕組みがなく、ある個体が永遠に生きようとしていたら、多様性はまったく生じず、環境の変化に適応できません。子供が生まれ、親は死んでいくからこそ多様性が生じ、環境の変化に適応できるわけです。いつまでも親が生きていたらこまるのです。

このように、生物の進化にとって有性生殖は有利だったのであり、有性生殖がはじまったときに死もはじまったのです。したがって死は宿命であり、受けいれるしかありません。多様性と死は、そもそも自然の基本的な仕組みであることを理解することが大切です。




多様性の重要性については、人間の社会や組織についてもいえるのではないでしょうか。画一化をすすめて同じような人だけをそだてたり、粒がそろった "兵隊" ばかりをあつめていると、たとえば工業社会の時代にはよかったが、情報産業社会の時代に移行したらとたんにダメになったということがおこります。

多様性がないために、あたらしい環境・時代に適応できる人がいなかったということです。画一化をすすめる時代はおわりました。 多様性をみとめることが大事です。


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▼ 参考文献
『Newton』(2017年9月号)、ニュートンプレス、2017年9月7日発行