思考実験をして、宇宙人と宇宙文明の観点から人間の文明(地球文明)をとらえなおすことには意義があります。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2017.8号』の連載「宇宙人を科学する」の第2回では、「宇宙人はどれくらいいる?」について論じています。

近年、たくさんの惑星が太陽系の外にもみつかっています。それらのなかには地球に似ているものもあり、生命がいるかもしれないとかんがえる天文学者がいます。




本論では、ドレイクの方程式をつかって宇宙文明の数を見積もっています。ドレイクの方程式はつぎの7つの項目(パラメーター)のかけ算であらわされます。


ドレイクの方程式

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ドレイクの方程式の最終項(L)は、電波通信技術をもつ文明が継続する時間です。

地球では1895年に、イタリア人のマルコーニが無線電信を最初に成功させました。したがって現在まで約120年間、電波通信技術をもつ高度な文明がつづいていることになります。この文明はあとどのくらいつづくのでしょうか?地球文明の寿命は宇宙文明の寿命のモデルになるのでしょうか?

残念ながら人間は今だに戦争をつづけています。人間の歴史は戦争の歴史であるといってもいいくらい数多くの戦争をしてきています。今日では多くの核兵器も存在します。核戦争がひとたびおきれば人間は簡単に絶滅してしまうかもしれません。あるいは全人類が絶滅することはなくても、文明の終焉はおこるかもしれません。

しかし一方で、このような問題を克服できれば、100万年以上、文明がつづくとかんがえる研究者もいます。

本論は、宇宙人と地球外文明についてかんがえる内容ですが、宇宙人と地球外文明についてかんがえることは、人間(地球人)と地球文明についてあらたな観点からみなおすことにもなります。宇宙人というとSFの話だとか、宇宙人なんてくだらないとおもう人がいるかもしれませんが、人間について客観的にとらえなおすよい機会です。

これはひとつの思考実験です。いわゆる歴史学や文明学とはちがう宇宙の観点から文明についてかんがえなおしてみることには意義があるとおもいます。




今日、「勝ち組、負け組の時代である」とよくいわれます。しかし文明がはじまったころから人間は戦争をしているのですから、大昔から、勝ち組・負け組の時代がつづいているとかんがえたほうがよいでしょう。石器時代はちがったかもしれませんが、すくなくとも文明のはじまりとともに、勝ち負けを基軸とする基本的な様式が確立しました。そして勝ち組の指導者は英雄になり、負け組は賊軍になるのです。このような勝ち組・負け組の基本様式から抜本的に脱却しないかぎり、人間界から戦争はなくならないのではないでしょうか。


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▼ 参考文献
『Newton 2017.8号』ニュートンプレス、2017年6月26日