だまされないために、課題をきめて本物に接し、事実をおさえるようにします。
『ナショナルジオグラフィック 2017.6号』では、「なぜ嘘をつく?」というユニークな特集をしています。偽ニュース・詐欺・政治家の嘘・・・。嘘をつく行為は人間の特徴でもあります。



つぎのような事例が紹介されています。

  • 有名な画家の作品の贋作を20年近く制作していたマーク・ランディス。
  • 経歴をいつわってプリンストン大学に入学したアレクシー・サンタナ。
  • 米国ウェストバージニア州チャールズストンで開かれた祭で「嘘つき大賞」に輝いたジェイコブ・ホール。
  • 天才詐欺師 フランク・アバグネイル・ジュニア、映画『キャッチ・ミー・イフ・キャン』の基になった。
  • ニクソンが関わったウォーターゲート事件。
  • 「あの女性と性的関係はもっていない」といったビル・クリントン。
  • 大リーガーによる八百長。
  • ボストン・マラソンで優勝したロージー・ルイーズ。
  • 人を楽しませる嘘、スリ師とマジシャン、アポロ・ロビンズと妻のエイバ・ドゥ。
  • 対戦相手をだますポーカー界のスーパースター、ダニエル・ネグラーノ。
  • ロシアの皇女を名乗る女性が続出。
  • フェルメールの贋作を制作したオランダ人画家、メーヘレン。
  • 高利回りをうたって投資家をだました詐欺師、チャールズ・ポンジ。
  • ネットで悪ふざけ、話をでっち上げる謎めいたアーティスト、ザデュル。
  • 『ニューヨーク・タイムズ』の記者が記事捏造、ジョイソン・ブレア。
  • 人類進化にまつわる化石の大発見をしたとした化石マニア、チャールズ・ドーソン。
  • ES 細胞の製作に成功したとした生物学者、ファン・ウソク。


本特集では、さまざまな観点から「なぜ嘘をつく」のかについて論じています。嘘をつくことは人間の特徴のひとつであり、きわめて社会的な行為といえるでしょう。おそらく、文明がはじまったときに嘘もはじまったとかんがえられます。嘘は、人間学とともに文明学の研究課題になるとおもいます。

今日もっとも問題になっている嘘はインターネット上の嘘です。ネット上では、かつてない速さで嘘情報が拡散していきます。ネットをつかって情報操作をする政治家もでてきます。嘘は、あらたな歴史的段階にはいったといえるでしょう。厄介なことになりました。



 
本特集は、人間のあらたな課題を指摘した点でユニークですが、解決策についてはのべていません。嘘や偽物を見抜くためには、たとえばクロスチェックをするなど、いろいろな方法がありますが、ここでいま論じている余裕はありません。

そこで逆に、本物をみる(本物に接する)ことの重要性を指摘しておきたいとおもいます。しかも一流のものに、なるべく小さいときから。子供だから模造品でいい、どうせわからないからというのはまちがいです。たとえば一流の革職人は小さいときから本物の一流の皮をさわっていたといいます。このような人は、すくなくともその分野ではだまされなくなります。だまされずに創造的になれます。

しかしあらゆる物事において本物や実物をみたりさわったりということは労力的にできないでしょう。そこで課題を明確にする必要があります。あれもこれもということではなくて人生や仕事の課題をしっかりしぼりこんで、その分野に関しては本物や事実をたえずおさえるようにします。

本物は現場にあります。現場まででかけていかなければなりません。フィールドワークが重要です。


▼ 参考文献
『ナショナル ジオグラフィック 2017.6号』日経ナショナル ジオグラフィック社、2017年5月30日