どのような課題においても、複雑な現象をみたら、それを単純化し、その本質にせまる努力をすべきです。
国立科学博物館の地下3階には「法則を探る」展示があります。さまざまな観測装置や実験装置があり、それらの一部は実際に操作して実験をしてみることができます。写真は平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >>


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キャベンディッシュの「ねじりばかり」
重力(万有引力)の強さをはじめてはかったキャベンディッシュの実験をしめす装置(模型)です。小さい金属球2個をさおの両端に下げ、その中央を金属線でつるしておきます。大きな金属球を小さな球に近づけると、球の間に万有引力がはたらき、小さな球がわずかに引き寄せられます。このとき、さおをつるるした金属線がねじれるので、そこにとりつけた鏡で反射した光の点がうごいて引力がはたらいていることがわかります。



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フィゾーの歯車
フランスのフィゾーがつくった実験装置を再現したものです。フィゾーは1849年に、このような装置をもちいて、はじめて地上で光の速さをはかるのに成功しました。光源からの光を8.633 km先に置いた鏡で反射させ、光の往復に要する時間を歯車の回転からもとめました。原理は簡単ですがが実現するのはむずかしく、レンズのつかい方などにさまざまな工夫がこらされています。フィゾーは夜の屋外でこの実験をおこない、31万3000 km/秒という速さをもとめました。 



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力から熱へ「ジュールの実験」
巻きあげたおもりが下がるときに水中の羽根車がまわり、羽根車と水の摩擦によって熱エネルギーが発生します。水の温度上昇からその大きさがわかるようになっています。この実験装置は、ジュールの歴史的実験を再現したものであり、1845年から1878年までジュールはこの実験をくりかえしおこない、エネルギーという概念を確立するのに貢献しました。


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物理学者たちは、長年の研究の結果、物理現象の根本(根底)には法則があることをあきらかにしました。またその法則を数式で表現してきました。

現在の物理学者は、物理現象の根本には法則があること、法則は数式で表現できることを前提(あたり前のこと)として研究をつづけています。

前提
  • 物理現象の根本には法則がある。
  • 法則は数式で表現できる。

たとえばニュートンは、物体を理想化して、質量をもった数学的な点「質点」としてとらえることにより、物理現象を数式にのせました。そして運動の法則を数式で表現しました。それぞれの質点は運動の法則にしたがって運動します。複雑な現象を法則でとらえることに成功したのです。

複雑な現象を単純化し、その根本にある法則をとらえることは人間のもっとも基本的な知性です。法則は、より一般的には本質といってもよいでしょう。本質をとらえることが重要なことは物理学にかぎったことではありません。あらゆる分野についていえることです。ただし物理現象以外の現象についてはその本質を数式で表現できるとはかぎりません。


複雑→単純化→本質


どのような物事でも、複雑な現象を目の前にしたらそれを単純化し、そして本質にせまる努力をすべきです。自然科学者のやり方はそのサンプルとして参考になります。

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