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モア全身骨格(完新世、約500年前)
(交差法で立体視ができます)

博物館の展示品(標本)をみるときには、さまざまな展示品を比較して相似点と相違点に注目すると、今までみえなかったことがみえてきます。
東京・上野の国立科学博物館で「大英自然史博物館」展が開催されています。

すぐれた解剖学者であったリチャード=オーウェン(1804-1892)は、モアの骨(写真)をみて、これが飛べない巨大な絶滅鳥のものであるとかんがえました。4年後に、より多くの骨が発見されてオーウェンの仮説がただしいことがわかり、多くの科学者がおどろきました。

オーウェンは、生物の体の類似点と相違点をしらべることで、何百種類もの動物の命名と詳細な記述をおこないました。「恐竜」(dinosaur)という用語もオーウェンがつくりました。オーウェンは比較解剖学の父とよばれます。 


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イグアノドン類の骨盤の化石(白亜紀前期、1億3500万年前)
(交差法で立体視ができます)
この化石は、オーウェンが1842年に、「恐竜」という分類群名を提唱するときの根拠のひとつでした。オーウェンは、それまでにも報告されていたイグアノドンなどの大型爬虫類たちに「恐ろしいトカゲ」つまり「恐竜」という名前をあたえました(注2)。




博物館の展示品(標本)をみるときには、オーウェンにならって、さまざまな標本の類似点と相違点に注目すると今までみえなかったことがみえてきておもしろいです。

類似点と相違点に気がつくためにはいくつかの標本を比較しなければなりません。目の前の標本だけに集中するのではなく、これまでにみてきた標本や周囲の標本と比較してみます。

類似と相違に着目するこの観察法は、博物館だけでなくどこでもつかうことができます。あらたな発見がきっとあります。




そもそも大英自然史博物館は、大英博物館(British Museum)の自然史部門からはじまりました。

大英博物館の収納スペースは、世界各地からとどけられる標本で手狭になっていました。そこでその自然史部門の責任者であったリチャード=オーウェンは何年もかけて政府にはたらきかけ、その結果1881年に、大英博物館の自然史部門分館がロンドンのサウスケンジントンに開館しました。1963年には、独自の評議会を設立して大英博物館から独立し、1992年には、大英自然史博物館(The Natural History Museum)に名称が変更されました。


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▼ 注1
大英自然史博物館展(国立科学博物館)
大英自然史博物館展(特設サイト)
公式動画

▼ 注2
この標本は、その後の研究でマンテリサウルスというあたらしい属名がつけられています。

▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『大英自然史博物館展 図録』読売新聞社発行、2017年