おなじことをくりかえしてトレーニングすると、その分野の情報処理能力が高まります。
白鳥敬著『定理と法則 105』(学研プラス)では「ヘッブの法則」についても説明しています(注1)。


ヘッブの法則:ニューロン発火が繰り返されるとシナプス結合が強くなる(記憶が良くなる)。


人間の脳のなかには、140億個ものニューロン(神経細胞)があり、ニューロンとニューロンのあいだはシナプスという器官でむすばれています。

感覚器官をとおして環境から刺激(情報)がくわえられると、シナプスの結合のひとかたまりが同時に活動して、脳は情報を処理します。

刺激が一定量をこえ、いきなりドバッと信号がながれることを「ニューロン発火」といいます。

このときに、おなじ刺激をくりかえしあたえるとニューロン発火がくりかえされ、そのシナプス結合は強化され、情報処理効率が向上します。このことをのべたのが「ヘッブの法則」です。具体的には、その刺激(情報)に関する記憶が強化されます。ヘッブの法則は記憶力がよくなる法則といってもよいでしょう。

したがってある分野を習得したいときに、その分野に関するおなじことをくりかえすことには意義があります。勉強だけでなくスポーツでも同様なことがいえます。




記憶に関しては、近年は、たいていのことはインターネットで検索できるようになったので、何でもかんでも記銘して、たくさんおぼえておくということに価値のある時代ではなくなりました。学校教育や入学試験のやりかたも抜本的にかんがえなおさなければなりません。

そこで記憶を、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の一環としてとらえなおしてトレーニングすることが大切です。具体的には記憶はプロセシングに位置づけるようにします(図1)。

170311 記憶
図1 記憶の位置づけ


くりかえしトレーニングして記憶力をたかめることは、すなわち情報処理能力を高めることです。記憶がよくできればアウトプットもよくできるようになります。 

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▼ 注1:参考文献
白鳥敬著『定理と法則 105』(人に話したくなる教養雑学シリーズ)学研プラス、2013年9月11日