がんの治療はむずかしいのが現状ですが、がん研究の動向に注目することは大事なことです。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2017.4号』では、シリーズ:細胞分裂のふしぎ 第4回(終)「不死化細胞 がん」と題して、分裂能力のたかい細胞である「がん細胞」と「幹細胞」について解説しています。




分裂能力の高い細胞には「がん細胞」と「幹細胞」があります。がん細胞は際限なくふえていきます。幹細胞は、皮膚や骨髄などの各臓器にそなわっています。「iPS 細胞」も幹細胞の一種です。

近年では、悪性腫瘍の中に「がん幹細胞」とよべる細胞があることがわかってきました。

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わたしたちの体の普通の細胞は、分裂をくりかえすと、1回の分裂にかかる時間が徐々にながくなり、やがて分裂しなくなります。これを「細胞老化」といいます。

しかしがん細胞はどこまでも際限なく分裂していきます。また幹細胞は分裂の頻度がひくく、細胞老化がゆっくりすすみます。ある種の幹細胞には分裂回数に上限がありません。

がん細胞が生まれる原因の代表例はがん抑制遺伝子の異常です。他方、ウイルスによるがんもあります。たとえば肝臓の肝細胞に感染するヒトB型肝炎ウイルスは、「発がんウイルス」のひとつです。

またがん細胞は、周辺の環境からの影響をうけて幹細胞の性質をもつ「がん幹細胞」になることがあります。

あるいは細胞分裂の際に、染色体がうまく分配されないと染色体の過不足が生じ、細胞ががん化します。またDNA そのものに傷がついていなくても、DNA の読みとられ方が変わるとがん細胞ができることもあります。

がん細胞は、組織の膜をやぶって血管のなかにはいりこみ、血流によって全身にひろがっていきます。そしてすこしずつ性質をかえながら細胞分裂をくりかえします。

治療薬での治療がむずかしいのは、一部の細胞の増殖はおさえられても、性質のちがうほかの細胞は生きのこってしまうところにあります。

またがん細胞そのものを死滅させることがむずかしいため、がん細胞のなかでおこなわれる代謝によって活性酸素が発生、それが DNA を傷つけて、あらたながんを誘発することもあります。

がん研究の課題はつぎのとおりです。

がん細胞の増殖をおさえつつ がん細胞を死滅させ、二次的に発生するがんをどのようにおさえていくか。




がん細胞が発生するしくみは徐々に解明されてきていますが、わからないこともいまだに多く、「iPS 細胞に、がん化のリスクがある」などというおそろしい話まであります。

残念ながら現段階ではがんの治療はむずかしいといわざるをえません。

しかしわたしたち一般人もがん研究の動向に注目し、がんについて理解をふかめていくことは大事なことだとおもいます。さしあたっては「がん検診」にどう対応するかといった課題があります。

『ニュートン』の今回のシリーズは、難解な医学研究の最前線をイラストをつかってわかりやすく解説しています。ほかの解説書を読むまえに見ておく価値があるとおもいます。


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▼ 参考文献
『Newton 2017.4号』ニュートンプレス、2017年4月7日発行