法則・物質・生命・環境をキーワードにすると現代のサイエンスがわかりやすくなります。
ジャーナリストの池上彰さんは、『はじめてのサイエンス』(NHK出版新書)のなかで、つぎの6つの分野にわけて現代のサイエンスを解説しています。
- 物理
- 化学
- 生物
- 医学
- 地学
- 環境問題
物理は、宇宙をつくる究極の要素とそこにはたらく法則をさぐる分野であり、どこまでも物質をこまかく分けていく方法をとります。そしてもうこれ以上わけられない究極の要素、素粒子の発見にいたりました。
化学は、さまざまな種類の元素をまなぶことで、物質の性質や変化について研究していく分野です。物質の多様性をあきらかにし、あたらしい人工物質をつくりだすことに重点がおかれます。
生物は、生命の仕組み、誕生と進化について研究します。進化と密接な関係にあるのが遺伝子研究です。そもそも生き物であるかどうかは代謝があるかどうかできまります。生き物は、細胞という一つの膜が外からいろんな栄養素をとりこんで、みずからのエネルギーとして増殖をしていく。不必要なものは外に出していく。これが代謝です。
医学では、細菌やウイルスなどの病原体についての研究などがすすんでいます。また近年の話題は再生医療です。
地学は、わたしたちが生きている地球環境や、地震や火山噴火などの自然災害について研究し、適切に対処するための方法をさぐります。
環境問題は、地球温暖化などグローバルにすすんでいる環境問題にとりくみます。社会問題の一環として環境問題をとらえ、政治や経済とも連携しながら研究をすすめ、対策を立案しなければなりません。
このように、サイエンスを理解するためのキーワードは、法則・物質・生命・環境であるといえるでしょう。とくに近年は、生命と環境が重視されています。図式(モデル)にすると下図のようになります。*

図1 サイエンスを理解するための図式(モデル)
生命の周囲には環境がひろがっています。人間は生命の一種です。環境は、地域・地球・宇宙へとひろがっています。矢印は代謝をあらわします(注)。そして生命と環境を理解するためには法則と物質の探究が欠かせません。わたしたちが認識している世界は物質でできていて、現象の奥底には法則が存在します。
『はじめてのサイエンス』に図1がでているわけではありませんが、図式は理解のたすけになるとおもいます。
*
前世紀までの工業の時代では、技術や工業の基礎として科学が位置づけられていました。あるいは科学とは基礎分野であり、その応用としての技術や工業がおもんじられていました。
しかし昨今は、生命と環境がキーワードです。このことはたとえば大学に、生命科学や環境科学の研究科がつぎつぎに新設されたり、生命科学や地球科学という分野があらたに確立してきたことからもわかります。情報産業の時代へ時代が移行したために、工業の時代がおわったということも反映しているでしょう。
さらに近年は、生態系(エコシステム)にくわえて「地球システム」というかんがえ方が提案されています。わたしたちの世界をひとつのシステム(体系)としてとらえるようになりました。図1をみても、わたしたちの世界はシステムになっていることがわかります。これは、世界をどこまでもこまかく分けていくという従来の方法とはことなる点に注意してください。最近のあたらしい見方です。
▼ 注
環境から生命にはいってくるのはインプット、その逆に、生命から環境へでていくのはアウトプットといってもよいです。アウトプットとして大量の情報発信もおこなっていることが人間の特色です。
▼ 関連記事
科学的な思考をする - 池上彰著『はじめてのサイエンス』(1)-
生命と環境にとくに注目する - 池上彰著『はじめてのサイエンス』(2)-
科学・技術の動向を注視する - 池上彰著『はじめてのサイエンス』(3)-
物理・化学・生物・地学を関連づけて全体的にまなぶ
▼ 文献
池上彰著『はじめてのサイエンス』(NHK出版新書)NHK出版、2016年10月11日