細胞分裂のときにほぼ完璧に DNA はコピーされますが、わずかにゆらぎがあり、これが生命の進化にも影響しています。自然のゆらぎに気がつくことは重要なことです。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2017.3号』では、シリーズ:細胞分裂のふしぎ 第3回「DNA を正確にコピーせよ!」と題して、細胞分裂のときに DNA がコピーされる仕組みについて解説しています。



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分裂してできた二つの細胞は基本的に、うり二つです。なぜなら、二つの細胞には、正確にコピー(複製)されて倍増した「DNA」という遺伝情報の分子が、均等に分配されるからです。


DNA は、鎖にたとえられる細長い2本の分子がらせん状にくみあわさった、直径2ナノメートルの二重らせん構造をしており、コピーがしやすい特徴をもともともっています。細胞分裂のときにコピーは、DNAのいたるところでいっせいに進行していきます。

DNA には、日光の紫外線などによって日常的に傷が生じていますが、コピーされたのちに傷が修復される仕組みがそなわっています。また無傷のらせんを活用して傷ついたらせんを復活させることもできます。

しかし DNA のコピーや修復は完璧ではないのです。生命が誕生して以来、コピーミスや修復もれがおこって DNA は変化しつづけてきているのであり、これが生命の進化にもつなっがっています。わたしたちヒトの細胞分裂では、コピーミスと修復もれの確率などを総合すると、1回の DNA 複製あたり10億文字に1文字程度が変化しているとされています。




このように細胞分裂はほぼ完璧ですが、わずかなゆらぎがあります。100パーセント完璧であれば、既存のものとまったくおなじものが出現しつづけるだけで変化はおこりません。しかしわずかなゆらぎがあるためにわずかな変化が生じ、これが生命の進化にもつながるというわけです。

自然は非常によくできています。奥底には法則があり、自然現象は規則的です。しかしゆらぎがあるのです。

このゆらぎが実はおもしろいのです。あるいはゆらぎがあるために予知に失敗するのです。

自然のゆらぎに気がつき、さらにゆらぎを活用することがこれからの人類の課題になってくるのではないでしょうか。ゆらぎは独創にもつながっているにちがいありません。


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▼ 注1
『Newton 2017.3号』ニュートンプレス、2017年3月7日発行