鳥瞰図をつかえば、歴史的(時系列的)な出来事を並列的にとらえなおすことができます。

歴史群像編集部編『超ワイド&パノラマ 鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』(学研プラス)の鳥瞰図をみて解説をよめば、日本史の理解を急速にふかめることができます。



本書は、日本史のハイライトをとりあげてわかりやすく解説しています。

たとえば古代最大の内乱「壬申の乱」にはつぎのような経過がありました。

  • 671年12月、天智天皇が、近江・大津宮で崩御する。
  • 皇太子・大友皇子が後継者になる。
  • 先代の天智天皇の独裁政治に不満をもっていた豪族らがさわぎをおこすようになる。
  • 天智天皇の皇弟である大海人皇子がうごきはじめる。
  • 672年6月、大海人皇子は吉野を脱出。伊賀、鈴鹿、桑名を経由して美濃を目指す。
  • 大海人皇子は美濃・不破関を封鎖する。
  • 大海人皇子は、琵琶湖の北と南からまわりこむように兵を二手にわけて大津宮へ侵攻する。
  • 672年7月22日、大海人皇子軍は瀬田の唐橋にいたる。
  • 対する大友皇子軍は瀬田の唐橋を分断して応戦する。
  • しかし大海人皇子軍は突破に成功し、瀬田の唐橋を占拠する。
  • やぶれた大友皇子は山前へ逃走し自害して果てる。
  • 大海人皇子は天武天皇となる。

これらの一連の出来事は、鳥瞰図をつかうと簡単にとらえなおすことができます。それぞれの出来事は鳥瞰図上にいわば空間配置されています。つまり出来事を直列的にではなく並列的にとらえなおすことができるのです。


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(6-7ページ)


歴史的な出来事を言葉をつかってひとつひとつおいかけていくと理屈っぽくなり時間がかかります。しかし鳥瞰図をつかえば瞬間的に全体を一望できるので簡単です。

鳥瞰図は試験勉強でもつかえます。たとえば本書の鳥瞰図を1分ぐらいながめて、つぎに目をとじてそれをおもいだす練習をします。どこまで正確にイメージできるでしょうか。言語でおぼえるよりも簡単なはずです。そして筆記試験などでは、鳥瞰図をイメージし(想起し)、言語をつかってアウトプットすればよいのです。

これはイメージ訓練でもあり、空間記憶法の一種でもあります。




壬申の乱は瀬田の唐橋で勝敗を決しました。瀬田の唐橋は交通の要衝であり、「唐橋を制する者は天下を制す」といわれます。このことは鳥瞰図をみれば一目瞭然です。

歴史的な出来事は時間軸にそって直列的にとらえるのが普通です。学校の歴史の授業でもそうしているとおもいます。

しかし鳥瞰図をつかえば、それぞれの出来事をそれぞれの場所でとらえることができ、空間的・並列的に歴史をとらえなおすことができるのです。ここには、言語をつかった情報処理ではない、時間の空間化ともいべき情報処理のはたらきがあります。


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▼ 文献
歴史群像編集部編『超ワイド&パノラマ 鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』(Gakken Mook)学研プラス、2017年1月12日