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鳥獣戯画(模本、東京国立博物館 本館)
(本館では撮影が許可されていました)
 
鳥獣戯画は、自然環境と人間との相互浸透的な世界を表現しています。

東京国立博物館で特別展「鳥獣戯画 ─京都 高山寺の至宝─」が開催されています(注1)。

墨線のみで動物や人物たちを躍動的にえがいた国宝・鳥獣戯画を、それがつたわる高山寺の至宝とともにかつてない規模で展観するという企画です。

日本絵画史上屈指の作品といわれる鳥獣戯画は、その全巻の修理をこのたびおえました。今回の特別展では、宝の甲・乙・丙・丁4巻とともに、この4巻からわかれ、国内外に所蔵される断簡5幅も集結、現存するすべての鳥獣戯画をみることができます。




鳥獣戯画をみると、動物が人間のようにえがかれ、人間が動物のようにえがかれています。動物が人間化し、人間が動物化しています。 人間でもあり動物でもある、 どっちつかずの生き物が主役です。

わたしはこれは単なる風刺画ではないとおもいます。

日本人は伝統的には、西洋人のように自然と人間を峻別しません。どっちつかずの領域、相互浸透的な領域をみとめているのです。

ここでは、自然が人間化し、人間が自然化しています。自然環境と人間のこのような相互浸透的な世界は実際に存在するのであり、この世界を表現したのが鳥獣戯画なのだとおもいます(図1)。

170110 鳥獣戯画
図1 自然の人間化、人間の自然化


この相互浸透的な世界に日本文化の本質があるとわたしはかんがえています。
 

▼ 注1
特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」
会期:2015年4月28日(火) ~ 6月7日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)  

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