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港川遺跡(沖縄)でみつかった男性頭骨(左)と女性頭骨(右)(2万年前)
(交差法立体視ができます)
後期旧石器時代に日本列島でくらしていた人々は、手をつかいこなしてさまざまな道具をつくりだしていました。創造的な能力は、すべてのホモ・サピエンスが本源的・潜在的にもっている能力です。

東京・上野の国立科学博物館で特別展「世界遺産 ラスコー展 -クロマニョン人が残した洞窟壁画-」が開催されています(注1)。

第2会場は、「クロマニョン人の時代の日本列島」の展示・解説です。ラスコーの洞窟壁画がえがかれた後期旧石器時代、日本列島の人々はどのような生活をしていたのでしょうか?

ホモ・サピエンスは20万〜10万年前にアフリカで誕生しました。その後、5万〜3万年前にはアジア各地にも移動しました。日本列島には、3万8000年前以降に海をわたって移住したと想像されています。

写真はいずれも交差法立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >> 



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磨製石器
日本では、3万8000年前頃に刃をみがいて仕上げた石器があらわれます。世界最古の磨製石器(ませいせっき)です。斧に似ていることから石斧(せきふ)あるいは斧形石器(おのがたせっき)とよばれ、木の伐採・加工あるいは皮革の加工につかわれたとかんがえられています。秋田県から奄美大島まで全国的にみつかっています。



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日本各地で産出する黒曜石
後期旧石器時代の日本列島の人々は石器の石材にこだわりました。黒曜石は、きれ味のするどい石器をつくるために採掘され、長距離を運搬されました。神津島産や隠岐産の黒曜石は海をこえて運搬されたことがわかっています。



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サキタリ洞遺跡(沖縄)からの発見
沖縄のサキタリ洞遺跡(後期旧石器時代)からは、世界最古の釣り針、貝殻製の道具やビーズ、ウナギの骨、カワニナ(巻貝の一種)、モクズガニの爪が発見されました。



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骨・角・皮を加工するための石器
彫器(ちょうき、左)は、骨や角をけずるためにつかいました。掻器(そうき、右)は、動物の皮から脂肪分をこそげ落としたり、皮をやわらかくする作業につかわれました。



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隆線文土器(りゅうせんもんどき、縄文時代草創期)
氷期がおわろうとする1万6000年前頃、世界最古級の土器が日本列島に出現して、縄文時代がはじまりました。温帯林がふえていくなか、人々の生活は、旧石器時代の移動生活から定着的な生活へと変化しました。そして1万1700年前以降の縄文時代早期にはいると大きな集落や貝塚が出現しました。




後期旧石器時代、日本列島でも、独自に発達・発展したつぎのような創造活動がありました。
  • 難易度の高い航海術
  • 世界最古の釣り針
  • 世界最古の海洋運搬(往復航海)
  • 世界最古の落とし穴(狩猟のための)
  • 世界最古級の磨製石器

日本列島では壁画こそのこっていませんが、このように、手をつかいこなしてさまざまな道具がつくりだされていました。

このことは、ホモ・サピエンスのなかで、クロマニョン人だけが創造的な特別な能力をもっていたのではなく、アジアあるいはほかの地域に拡散したホモ・サピエンスにも創造的な能力があったことをしめしています。

つまり、アフリカで誕生したホモ・サピエンスは本源的に創造的な能力をもっていたのであり、世界各地に拡散・移住しながら、それぞれの地域の環境に適応して、それぞれに創造的な活動をおこなったのです。

したがって生物学的・人類学的なこのような客観的な事実からは、前世紀の日本のインテリがのべていたつぎのような主観は否定されます。

  • ヨーロッパ人は、ほかよりもすぐれた非常に高度な芸術を創造した。
  • ヨーロッパの文化は日本の文化よりもすぐれている。
  • ヨーロッパの文化は日本の文化よりもすすんでいる。
  • ヨーロッパの諸語にくらべて日本語は曖昧でわかりにくく、おとっている。
  • ヨーロッパ人は日本人よりもすぐれている。
  • 日本はダメだ。

ヨーロッパ人や日本人にかぎらず、地球上に現在生息する人間はすべてホモ・サピエンスです。北方の人々はネアンデルタール人の末裔であり、熱帯雨林の人々はチンパンジーの親戚ということは決してありません。みなホモ・サピエンスです。

生物学・人類学・生命科学の客観的な研究により、ホモ・サピエンスの内部において生物学的な能力の上下はなく、ホモ・サピエンスは誰もが、高度な情報処理能力を本源的・潜在的にもっていることがわかりました。それを顕在化させるためには手・指をうまくつかいこなす訓練をするとよいでしょう。


▼ 注1
特別展「世界遺産 ラスコー展 -クロマニョン人が残した洞窟壁画-」
国立科学博物館のサイト

▼ 記事リンク
イメージをえがく - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(1)-
洞窟の構造をとらえる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(2)-
クロマニョン人の情報処理能力をみる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(3)-
手・指をつかってアウトプットする - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(4)- 
手をつかいこなして道具をつくる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(5)-
イメージをえがき、手をつかってアウトプットする - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(まとめ)-