地図は、ありとあらゆる情報を整理し記憶し処理しまとめるための基礎としてつかえます。

江戸東京博物館で、特別展「よみがえれ! シーボルトの日本博物館」が開催されています(注1)。シーボルトの没後150年を記念し、ミュンヘンから里帰りした約300点の作品によって、シーボルトが構想した「日本博物館」の再現をこころみるという企画です。

特別展に先立つ調査・研究により、シーボルトにわたった持ちだし禁制の日本地図が「カナ書き伊能特別小図」であったことが今回はじめて実証されました。

この日本地図を所持していたことが発覚したため、地図は没収され、シーボルトは国外追放となりました。いわゆる「シーボルト事件」です。

当時は折しも、伊能忠敬の全国測量による「伊能日本全図」(大日本沿海輿地全図)が完成した直後でした。幕府天文方の高橋景保は、この「伊能日本全図」をもとにして「カナ書き伊能特別小図」を作成し、これをシーボルトにわたしたのでした。一方のシーボルトは、ヨーロッパに関する文献・資料などを高橋景保にわたしたようです。

地図は没収されてシーボルトは国外追放となりました。しかしながらシーボルトは「カナ書き伊能特別小図」をひそかにうつしてもちだしていたのです。トレース紙にえがかれたその写図がヨーロッパで発見され、今回の特別展で初公開されています。

シーボルトは、前例のない大規模な日本調査をおこないました。日本に関する膨大な情報や資料を収集、ヨーロッパにもちかえりました。そしてその成果を、『日本植物誌』『日本動物誌』『日本』などにまとめ、ヨーロッパで出版しました。成果をまとめるためにはどうしても日本地図が必要だったというわけです。そのために、シーボルトは命をかけて日本地図の写図をもちかえったのでした。とても興味ぶかい話です。

地図は、ありとあらゆる情報を整理し記憶し処理しまとめるための基礎となります。今回の特別展であらためて地図の役割と重要性について再認識しました。地図は万学の基礎といってもいいくらいです。

今日では、Googleマップなど、誰でも手軽に地図を見ることができますが、あらためてその効果的なつかい方について検討してみる必要があるでしょう。




シーボルトは医師でしたが、実際には博物学者であり、ヨーロッパの博物学の方法で日本を総合的に調査・研究しました。当時の日本には、ヨーロッパの水準の博物学はあありませんでした。シーボルトの研究は、博物学的・総合的な最初の日本研究でした。今でこそ日本のことは日本人が研究していますが、シーボルトは日本研究の最初の一歩をしるしたといってもよいでしょう。

特別展会場の展示品の数々、再現された「日本博物館」をみれば、シーボルトが日本研究にかけた大きな情熱がつたわってきます。


▼ 注1
よみがえれ! シーボルトの日本博物館
会期:2016年9月13日〜2016年11月6日
会場:江戸東京博物館(写真撮影は許可されていませんでした)
※ 長崎、大阪、名古屋に巡回します。
 
▼ 参考文献
国立歴史民俗博物館監修『よみがえれ! シーボルトの日本博物館』(図録)、青幻舎、2016年7月21日

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