〈事実→前提→仮説〉とすすんで仮説をたて、〈前提→仮説→事実〉とすすんで仮説を検証します。

わたしたちはさまざまな問題に日々直面しています。問題を解決するための有効な方法のひとつとして、仮説をたてる方法があります。今回は、仮説をたてるおもしろさと、仮説のたしかめ方についてかんがえてみたいとおもいます。つぎの例を参照してください。


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■ 例1

今朝、ゴミ置き場に行ってみたら、ゴミ袋がやぶられてゴミがちらかっていました。そういえば、「カラスは、人間のゴミを食いあらす性質をもつ」ということが科学的な研究によりあきらかになっています。したがって、ゴミ置き場のゴミをちらかしたのはカラスではないだろうかとかんがえることができます。この、「ゴミ置き場のゴミをちらかしたのはカラスではないだろうか」というのは仮説になります。

  • 事実:ゴミ置き場のゴミ袋がやぶられてゴミがちらかっていた。
  • 前提:カラスは、人間のゴミを食いあらす性質をもつ。
  • 仮説:ゴミ置き場のゴミをちらかしたのはカラスではないだろうか。

ゴミがちらかっていたのは実際に眼でみた事実です。その事実を、カラスの性質という一般的な前提にてらしあわせてみると、 "犯人" はカラスではないだろうかという仮説をたてることができるのです。カラスがゴミをちらかしているところは実際には見ていないのですから、これはあくまでも仮説です。

このように仮説をたてる方法は仮説法あるいは仮説発想法、略して発想法とよぶことができます。




すると、つぎのような思考もできます。

「カラスは、人間のゴミを食いあらす性質をもつ」という前提のもとで、「ゴミ置き場のゴミをちらかしたのはカラスではないだろうか」という仮説を採用すると、明日も(今後も)、ゴミ置き場のゴミをちらかしにカラスがやってくるにちがいないという予想(事実の予見)ができます。

  • 前提:カラスは、人間がだしたゴミを食いあらす性質をもつ。
  • 仮説:ゴミ置き場のゴミをちらかしたのはカラスではないだろうか。
  • 事実の予見:ゴミ置き場のゴミをちらかしにカラスがまたやってくるにちがいない。

このように予想して、明日あるいはそれ以後、ゴミ置き場にはやめに行って、カラスが実際にやってくるかどうか観察すればよいのです。カラスが実際にやってきてゴミをちらかすことが確認されれば、予想(予見)はあたり、仮説はただしかったことになります。確認作業をさらにつみかさねれば仮説のたしからしさはとても高まります。つまり仮説は検証されます。

このように、前提から事実を予見していく方法は演繹法とよぶことができ、予見を確認して事実をあきらかにし、仮説を検証していく方法を実験観察あるいは単に実験といいます。



■ 例2

一昨日の朝、旧友の太郎を駅前で見かけました。昨日の朝も見かけました。今日も見かけました。そういえば太郎は、規律ただしいまじめな性格だった。太郎は、今は、会社づとめ(あるいは役所づとめ)をしているのではないだろうか。

  • 事実:一昨日の朝、旧友の太郎を駅前で見かけた。昨日の朝も見かけた。今日も見かけた。
  • 前提:太郎は、規律だだしいまじめな性格だった。
  • 仮説:太郎は、今は、会社づとめをしているのではないだろうか。

駅前で太郎を見かけたのは事実です。この事実を、太郎の性格という一般的な前提にてらしあわせてみると、太郎は、今は、会社づとめをしているのではないだろうかという仮説をたてることができます。会社づとめをしているのではないかというのはあくまでも想像であり、実際にはたしかめていないので仮説です。




すると、つぎのような思考もできます。

太郎は、規律だだしいまじめな性格であるという前提のもとで、太郎は、今は、会社づとめをしているのではないだろうかという仮説を採用すると、明日も明後日も、(平日の)朝、駅前に行けば、太郎を見かけることができるという予想(事実の予見)ができます。

  • 前提:太郎は、規律だだしいまじめな性格である。
  • 仮説:太郎は、今は、会社づとめをしているのではないだろうか。
  • 事実の予見:明日も明後日も、朝、駅前に行けば太郎を見かけることができるにちがいない。

あとは、明日以降の朝、駅前に行ってみて、太郎を見かけることができるかどうか確認すればよいのです。 太郎がいれば予見はあたり、仮説は検証されたことになります。



以上を参考にして、さまざまな場面で積極的に仮説をたたてみるとよいでしょう。

上記の方法は自然科学の方法であり、また推理小説(ミステリー)の方法でもあります。これらを頭のなかでおこなえばいわゆる思考実験になり、アウトプット(文章化やプレゼンテーション)のときにつかえば論理的なアウトプットができます。一般的にはアウトプットのときにつかうとよいでしょう。


▼ 追記
先日、あるシンポジウムである有名な編集者がつぎのような発言をしていました。

「このまえ、朝、道をあるいていたら、ゴミ袋がやぶられ、あちこちにゴミがちらばっていてとてもおどろきました。このようなことをするわかい人が増えて本当に残念です。社会はみだれています」

しかし、 "犯人" は実はカラスだったのです。この人は、カラスの仕業だったということがわからなかったのです。仮説のたてかたと検証の仕方を知らないまま、思い込みだけで発言(アウトプット)をしてしまう姿がそこにはありました。

しかしわたしはそのときに、仮説と検証の方法をカラスの事例で説明することをおもいつきました。


▼ 参考文献
竹内均・上山春平著『第三世代の学問 「地球学」の提唱』(中公新書)1977年8月
上山 春平著『上山春平著作集(第1巻) 哲学の方法』法蔵館、1996年4月