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「チリの岩礁地帯」水槽(交差法で立体視ができます)

ステレオ写真の立体視の方法をつかえば水族館などでみた3次元空間を3次元空間として再現することができます。

写真はいずれも交差法で立体視ができます。大阪市にある海遊館(注1)の「チリの岩礁地帯」展示で撮影しました。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >>

わたしは海遊館に行って、それぞれの水槽とそのなかにいる生き物たちを見ました。そこでは当然のことながら3次元的(立体的)に見えました。ステレオ写真をつかえば、わたしが見たこの3次元空間を海遊館に行っていない人にもおなじようにお見せすることができます。つまり3次元空間を3次元空間として再現できます。

これは、影を強調したり背景をぼかしたりして平面(2次元)の写真を3次元的に擬似的に見せるように工夫しているのではありません。交差法あるいは平行法をつかえば3次元は3次元としてその場を実際に再現することができるのです。

ここにステレオ写真のおもしろさがあります。



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マイワシとカタクチイワシ
イワシは、さまざまな海洋生物の重要な餌になっています。わたしたち人間にとっても大切な資源です。カタクチイワシは口が大きく、上あごがとくに目立つことから「片口」の名がつきました。



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口を大きく開ける(左下)
口を大きく開けながらおよぐことで餌のプランクトンを海水と一緒に口からエラへとながしこみ、そしてエラの内側には鰓耙(さいは)という器官があり、まるでネットのようにプランクトンを海水中からとらえます。



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イワシの群れ
イワシは大きな群れをつくって回遊します。自由自在に形を変えながら群れがおよぐ姿はまるでひとつの巨大な生き物のようです。かたまりになった群れは大型の捕食者をよせつけない効果があるといわれています。群がおそわれた場合には、群が二つに分かれたり、急に方向を変えたりするので捕食者はねらいがさだめにくくなります。こうして食べられる魚は一部であり、大部分の魚は生きのびます。水槽のなかをしばらく観察しているとひとつの大きな生命体が運動しているように感じられてきます。




チリの沿岸には、南極からのつめたいフンボルト海流と深海からわきあがる栄養豊富な海水がながれこみます。この栄養分と太陽からの光によって大量のプランクトンがはぐくまれ、プランクトンを餌とするイワシが巨大な群れをつくって生息します。するとイワシをもとめて、ペンギンやペリカンなどの海鳥たちが何百万羽もあつまってきます。こうして巨大な生態系が形成されます。




海遊館の建物は立体的な構造になっていて、8階の「日本の森」展示からはじまり、7階→6階→5階→4階とらせん状にくだりながら環太平洋の各水槽を見る仕組みになっています。階をおりながら、水面上、水中、水底とおなじ水槽の縦方向を見ることができます(表1)。

161020 表
表1 各階と展示水槽


「チリの岩礁地帯」については5階までおりてきたところで見ることができました。


▼ 参考文献
『海遊館ガイドブック』(第3版)海遊館発行、2015年4月1日

情報を眼でうけとり判断する - 海遊館(2)「アリューシャン列島」-
立体視をして遠近の両方をみる - 海遊館(3)「モンタレー湾」-
周辺視野をつかって全体的にとらえる - 海遊館(4)「パナマ湾」-
立体視をしながら知識もふやす - 海遊館(5)「エクアドル熱帯雨林」-
立体視をしながら眼球の筋肉をバランスよくつかう - 海遊館(6)「南極大陸」-
ひろい視野で立体視をする - 海遊館(7)「タスマン海」-
3次元空間で環境をとらえる - 海遊館(8)「グレート・バリア・リーフ」-
立体視をして意識の場を拡大・拡充する - 海遊館(10)「瀬戸内海」-
※ 番号は水槽番号です。

太平洋の世界を心の中につくる - 海遊館(まとめ1)-
1.概観→2.観察→3.まとめ - 海遊館(まとめ2)-