161018 記憶法
図1 情報処理の訓練

新聞や書籍・資料を読んだら、〈記銘→保持→想起〉をし、要点を書き出す(アウトプットする)練習をするようにします。想起して書き出すのがポイントです。

2016年10月17日付の朝日新聞に、「書き写し、はじめよう 天声人語」という広告が掲載されていました。「天声人語書き写しノート」に「天声人語」の本文を毎日かき写していこうという提案です。

「書き写す」というのは古来おこなわれてきた伝統的な勉強法であり、この効果を今でも信じている人がいるかもしれません。

しかし時代は大きく変わりました。現代は高度情報化社会です。そこでつぎのような勉強法をやってみるとよいです。

  1. 「天声人語」を読む。
  2. キーワードを5つぐらい記銘する。キーワードを保持する。キーワードを想起する。
  3. 先に読んだ『天声人語』本文の要点を3箇条の箇条書きで書き出す。このときは何も見ないで(本文は見ないで)、キーワードを想起しながら書き出す(注1)。

これは情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の訓練になります(図1)。〈記銘→保持→想起〉は記憶法にあたります。記銘とは記憶の第一段階であり、あらたに経験した内容をおぼえこみ定着させることです。

  1. インプット :読む
  2. プロセシング:記銘→保持→想起(記憶法)
  3. アウトプット:書き出す

現代の高度情報化社会では書き写すよりもこの方があっています(注2)。伝統的な勉強法にとらわれる必要はありません。現代では、膨大な情報にどうとりくんでいくかが大きな課題になっています。現代は情報過多の時代なのです。そこで、要点を書きだすことが誰にももとめられます。ざっくりいうとどうなのかということです。

情報処理訓練は「天声人語」にかぎったことではありません。新聞や書籍や資料を読んだら、まずは、ざっくり要点を書き出すようにします。わたしもいつもやっています。このときに本文を見ながらそれを写し取るのではなくて、情報を一旦こころのなかにいれて、そして情報を処理した結果を元の資料を見ないで出力するところにポイントがあります。意識のなかのプロセシングを大切にするということです。これによって情報処理能力がたかまり、心がきたえらます。


▼ 注1
初心者のアウトプットは3箇条の箇条書きでよいでしょう。中級者は、文章として、たとえば3行ぐらいの要約文を書き出す練習をします。上級者は、あらたにえられたアイデア、おもいついたこと、考察、意見などもあわせて書き出すとよいでしょう。

いずれの場合でも、まずは、不完全でかまわないので原文を見ないで想起して書き出してみます。そしてその後で原文を見なおして、書き出した文を補足・修正するようにします。

▼ 注2
元の資料(原文)を見ながら書き写しているだけだと、右から左へ情報を移動させているだけでプロセシングがおこりません。何も見ないで想起して(おもいだして)書き出すのがポイントです。想起訓練の重要性にはやく気がつくべきです。たとえば筆記試験のときも何も見ないで想起して解答しなければなりません。想起力がもとめれれます。