民主政を基盤にして文化を花ひらかせた都市国家をとらえなおすことは重要なことです。そのモデル(模式図)とともに具体例をみるのがよいです。

東京国立博物館・平成館で、特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」が開催されています(注1)。この特別展の中心は、第4展示室「幾何学様式〜アルカイック時代」(前900年頃〜前480年頃)と第5展示室「クラシック時代」(前480年〜前323年)であり、都市国家の誕生と発展に注目するとおもしろいとおもいます。

モデルをつかって都市国家の構造と機能をつかむ - 特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」(3)- >>

古代ギリシャの都市国家のなかで特に著名なアテネとスパルタについて今回は見てみたいとおもいます。


■ アテネ
古代ギリシャのアッティカ地方の集落の統一が都市国家アテネ建設のはじまりでした。

アテネの人々は終身制の支配者を選出する制度をつくりましたが、前8世紀にはそれを10年間の任期制へと変更しました。前624年には法の成文化をおこない、公正な国家への第一歩をしるしました。前594年「ソロンの改革」は政治的平等を達成するために重要でした。それによりすべての成人男性市民が政治に参加できるようになりました。

民主政(デモクラシー)という言葉は、古代ギリシャ語の「デモクラティア」に由来します。デモスは「自由市民」という意味であり、クラトスとは「権威」あるいは「支配」をあらわす単語でした。アテネの民主政は特筆すべきすぐれたものでした。

その核心をなす原則はつぎの3つでした。
  • イソノミア: 市民は法のもとで平等である。
  • イソティミア:国家から付与される特権において平等である。
  • イセゴリア: 言論の自由において平等である。

こうして都市国家アテネは前6世紀には繁栄をむかえ、独自の文化が大きく花ひらきました。アッティカ地方の工房ではすばらしい製品がたくさん生産され、地中海全体にひろまりました。大がかりな建築もなされ、市街区の刷新計画も実施されました。

アテネ民主政の理念の中心には人間がいました。ソクラテス(前469〜前399)もアテネ市民の一人であり、人間と徳の本質とは何かを説きました。またプラトンやアリストテレスも哲学を大いに発展させました。


■ スパルタ
前8世紀初頭に5つの近隣村が1つの共同体に統合され、政治的・社会的改革をへて、独自の政治形態をとるようになったのが都市国家スパルタのはじまりです。スパルタは、2人の王を長老会(ゲルシア)と5人の監督官(エフォロイ)が補佐する一方、自由身分のスパルタ人男性はみな民会(アペラ)に参加するという独自の政治的権利をもちました。

前720年には、唯一の植民都市であるタラスを建設しました。

しかしその後、メッセニアの隷属民(ヘロット)が何度も反乱をおこしたために恒常的な臨戦態勢が必要となり、きびしい軍事的生活様式を重視するようになりました。こうしてスパルタは、ギリシャ最高の軍事力をほこるようになり、その社会は内向的で厳格な特徴をもつようになりました。これが「スパルタ教育」の由来です。




古代ギリシャを理解するためには都市国家をキーにするのがやはりよいようです。そのためには都市国家のモデル(模式図)をイメージするとともに、個々の都市国家の事例を具体的にみていくのがよいでしょう。

古代の都市国家は、その後の帝国や現代の領域国家とはあきらかに形態がちがいます。

都市国家は、民主政を基盤にして学問や芸術も大きく発展させました。都市国家は、その後の帝国(領域国家)にくらべるとはるかに規模が小さく、それは人々の顔がまだ見える大きさだったといってもよいでしょう。その後の帝国よりも人間重視であったのであり、素朴で人間的な文化がまだのこっていました。

今回の特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」は都市国家についてとらえなおしができる貴重な機会になっています。わたしたちは、帝国の時代がはじまる前の都市国家の時代をもっと見直す必要があるでしょう。民主的な世界を今後あらためてつくりだしていくうえで参考になる事例が多々あるとおもいます。


▼ 注1
特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」 
会場:東京国立博物館・平成館
会期:2016年9月19日まで