よく眠れるとプロセシングがすすみます。睡眠中のプロセシングを重視することはよくできた情報処理をすすめる近道になります。

内山真著『睡眠のはなし』 は、睡眠の意味と仕組み、快眠のためのヒントについて医学の立場から解説した睡眠学の入門書です。人はなぜねむくなるのか、どうして夢をみるのか、どのくれいねむればよいのか、睡眠の謎と意味を解きあかしていきます。




本書の178-181ページには睡眠障害に対処するための12の指針が掲載されていて参考になります。


睡眠障害対処12の指針(注1)
  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
  2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
  3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
  4. 同じ時刻に毎日起床
  5. 光の利用でよい睡眠
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
  7. 昼寝をするなら、15時前の20〜30分
  8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
  9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のびくつき・むずむず感は要注意
  10. 十分眠っても日中の眠気が強いときには専門医に
  11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
  12. 睡眠薬は医師の私事で正しく使えば安全


睡眠時間は人によってそれぞれですので睡眠時間にこだわる必要はありません。歳をとると必要な睡眠時間はみじかくなります。カフェイン摂取や喫煙は寝る前にはさけ、自分なりのリラックス法を工夫します。香り(エッセンシャルオイル)をつかうのもよいです。また日中の運動は熟睡を促進します。

就床時刻にはこだわる必要はありませんが、おなじ時刻に毎日おきるのがよいです。そのためには目覚めたらすぐに日光をとりいれて体内時計をスイッチオンにします。するとおのずと夜にねむくなります。また心と体の目覚めに朝食は重要です。

睡眠中にはげしいイビキがあったり呼吸が停止するときには専門医に相談してください。睡眠時無呼吸症候群の可能性もあります。




睡眠中に、日中にえた記憶や技能などの高度な脳機能をささえる脳過程が進行していることが医学の研究によりあきらかになってきました。睡眠は単なる休息ではなくて、情報の取捨選択やその定着のために大きく関与しています。物事の法則をみいだす能力や科学する心は睡眠によってささえられていたといってもよいでしょう。

したがって起きているとき(覚醒時)の複雑なプロセシング(情報処理過程)をかんがえるよりも、睡眠中のプロセシングをまず重視したほうがよくできた情報処理をすすめる近道になります。

こうして睡眠は、人間生活や人生への人間学的理解をすすめ、社会の問題に対してもあらたな視点を提供します。


▼ 引用文献
内山真著『睡眠のはなし - 快眠のためのヒント』 (中公新書)中央公論新社、 2014年1月25日

▼ 注1
厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班 平成13年度研究報告書