160807 錯覚
図1 情報処理の過程で錯覚が生じる

私たち人間は情報処理によって世界を認知しています。しかしその情報処理の過程で錯覚も生じます。まずは、錯覚がおこっていることを自覚することが大切です。

錯覚は、わたしたちの日常のさまざまな場面で生じます。スポーツの試合のなかでもおこります。一方、トリックアートやだまし絵は、錯覚をうまく利用した不思議でおもしろい芸術です。

錯覚は、みずから体験(実験)すること、錯覚がおこっていることを自覚することがまず大切です。本ブログで紹介している書籍や展覧会などを活用してみるとよいでしょう。

錯覚が自覚できたら、つぎは錯覚をコントロール(制御)する段階へすすむとよいです。錯覚は、それがおこらないほうがよい場面(自動車運転やスポーツなど)では、錯覚をなくす努力をしなければなりません。他方、トリックアートなどでは錯覚をたのしみ、錯覚を利用してオリジナル作品をつくってみるとおもしろいです。




錯覚は、人間の情報処理の過程で生じます。

わたしたち人間は、目や耳などの感覚器官で外界の情報をとらえます。感覚器官がとらえた情報は、脳で処理されることによって認知にいたります。たとえば目でとらえられた光は電気信号に変換されて脳におくられ、脳がその信号を処理して映像や色彩をつくりだします。わたしたちが見ている世界はこのような情報処理にもとづく像であり、情報処理の結果としてわたしたちは世界を見ているのです。

感覚器官が情報をうける場面はインプット、脳が信号を処理する場面はプロセシングとよんでもよいです(図1)。錯覚は、このようなインプットとプロセシングの過程で生じます。




錯覚は、見る人の経験的な先入観や常識がまずあって、視覚効果がそれにくみあわさるとひきおこされます。だまし絵は、だまし絵だけでだまそうとしているのではなく、人間の経験や常識と組みあわせて総合的にだましているのです。

だまし絵の仕組みがわかると、かたよった見方をしていると錯覚がおこるということがよくわかってきます。だまし絵の作者は、そのようなメッセージをユーモアをまじえてつたえようとしているのではないでしょうか。

錯覚による誤解をさけるためには、対象を見るときに、その周辺も見て、遠くからも見て近くからも見て、空間の大きなひろがりのなかで本当の姿をとらえるようにするとよいです。また情報処理の次元を高めていく努力も必要でしょう。1次元よりも2次元、2次元よりも3次元です。


▼ 記事リンク
脳の情報処理の仕組みを理解する 〜DVD『錯覚の不思議』〜
視覚効果と先入観とがくみあわさって錯覚が生まれる - 特別企画「だまし絵 II」-
平面なのに絵が飛び出す - 目の錯覚を利用した3Dアート -
錯視や錯覚を実験する -『錯視と錯覚の科学』-
錯覚の実験を通して知覚を自覚する - 一川誠著『錯覚学 知覚の謎を解く』–
遠近のひろがりのなかで対象を見る - だまし絵からまなぶ -
次元を変えると見えてくる - ケイガン作「トカゲ」-
錯視を通して情報処理を自覚する - 杉原厚吉著『錯視図鑑』-
目で見たら、必要に応じて定量的情報も取得する - 2本のバナナ -
対象の空間配置を正確にとらえる -「重力レンズ」からまなぶ -
錯覚に気がつく - フィービ=マクノートン著『錯視芸術 遠近法と視覚の科学』-
服部正志作「スーパートリック3Dアート展」(まとめ)