錯覚をさけるためには、対象を定量的に計測したり、さまざまな視点から対象をとらえなおしてみるとよいです。

さいたま新都心にある「さいたまスーパーアリーナTOIRO」で服部正志作「スーパートリック3Dアート展」が開催されています(注1、8月21日(日)まで)。

展覧会場で、トリックアートを見ていると錯覚(錯視)は誰にでも普通におこることがよくわかります。

肯定的にとらえれば、錯覚は、わたしたちを存分にたのしませてくれます。

しかしたとえばスポーツや自動車運転では錯覚がおこることはのぞましくありません。たとえばサッカーでは、どういう場面で審判に錯覚がおこるかが経験的に知られていて、錯覚が誤審をうみださないような対策が検討されています。どんなに訓練をつんだすぐれた審判であっても人間である以上錯覚はさけられないのです。

錯覚がおこるということは人間の感覚系には限界があることをしめしています。人間の感覚系がとらえた「この世」はこのような観点からみると錯覚にみちあふれているというのが実際のところです。

錯覚は、対象のもつ視覚効果と、それを見る人の経験や記憶や先入観とがくみあわさったときに効果が最大になります。したがって年齢をかさねるほど経験や記憶が増えるので錯覚におちいりやすくなります。

それでは錯覚をさけるにはどのようにすればよいのでしょうか?

ひとつは定量的に対象を計測することです。自然科学者や技術者が普通におこなっていることであり、対象を客観的にとらえなおすことができます。

もうひとつはさまざまな視点から対象を見直すことです。たとえばトリックアートも、どこからでも3Dに見えるわけではありません。ある人は平面図だといい、ある人は立体模型だというでしょう。意見のくいちがいは視点のちがいからきていることが多いのです。そこでひとつの視点にとらわれずにさまざまな視点から見直してみます。するとある一点から見ると3Dに見えますが、立ち位置をかえて別の角度から見ると床と壁に絵がえがかれているだけだということがすぐにわかります。

このような意味では、パソコンなどのディスプレー(2D画面)で見ているだけでだと錯覚におちいりやすいです。もうすでに錯覚しているかもしれません。錯覚をさけるためには現地・現場に実際に行ってさまざまな視点から対象を見直す必要があります。

一方で、くだらない対象だとおもっていたら、あるとき、別の視点から見直してみたらおどろくべき真実がわかったということもありえます。別のある角度から見てみたら、全体像が一気にとらえられたなんてこともおこりえます。そのような時空場の一点をさがしだすのも能力のうちです。


▼ 注1
服部正志作スーパートリック3Dアート展

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