IMG_4539
東京都美術館(入り口)

若冲展に行って個々の作品を味わうと同時に、会場の三次元空間の中に自身をくみこんでみると、動植物が共生する生態系の再現空間を体験することができます。

東京・上野の東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」が開催されています(注1)。生誕300年を記念して、初期から晩年までの若冲の代表作がかつてない規模で結集しています。若冲(1716-1800)は、18世紀(江戸時代中期)に京都で活躍した画家です。

生誕300年記念 若冲展
 会場:東京都美術館 企画展示室
 会期;2016年4月22日(金)〜5月24日(火)
 開室時間:午前9時30分〜午後5時30分(金曜日は午後8時まで)
 休室日:5月9日(月)


みどころは何といっても「釈迦三尊像」(3幅)と「動植綵絵」(30幅)です。はいった瞬間、圧倒されます。1階の展示室には、みごとな「若冲ワールド」がひろがっています。「釈迦三尊像」と「動植綵絵」の全33幅が一挙にみられるまたとない機会です。

全体感を味わってから、個々の作品を順番にみていきます。精緻な描写技法で動植物をうつくしくあざやかにえがいています。生命の躍動や力強さが感じられます。会場で実物をみると印刷物でみるよりもはるかにナチュラルです。書籍や図録の印刷では色彩がやや強調されているのか、あざやかのはいいのですが、それがいきすぎるとどぎつい感じがすることがありますが、そのようなことは実際にはまったくありません。

そしてもういちど全体をみわたすと、個々の作品のすばらしさはもちろんですが、作品全体がつくりだす有機的な雰囲気がいいです。個々の作品もさることながら会場全体として一つの世界がつくりだされているのがわかります。これら全33幅は京都の相国寺でもともと一堂に会していたのです。現代的にいうならばこれは生態系の再現です。あらゆる動植物が自然の体系のなかで共生しています。会場にいけば、この立体空間あるいは三次元構造のなかに身をおいてみることができます。

若冲の作品は、一枚一枚の絵が万物の共生をあらわしていますが、しかしそれだけでなく、すべての絵があつまった全体としても共生の世界をあらわしています。それぞれの絵がひびきあってもっと大きな共鳴場がつくりだされています。ここには階層構造があります。個が全を優越するのでもなく、全が個を支配するのでもない、個即全・全即個といった世界がひろがっています。

会場で作品群にとりかこまれてみると、書籍や図録をみているだけではできない、このような一つの体系のなかに自身がくみこまれたような不思議な体験をすることができます。これはもう理屈ではありません。美術館に足をはこぶ醍醐味がここにあります。




そして『鳥獣花木図屏風』(六曲一双 各168.7×374.4cm)。画面はおよそ1センチに区切られ、その中にさらに小さい四角形をつくって色をぬる「桝目描き」という技法でえがかれています。みる角度や光の状態によって色彩が変化する仕掛けもあります。まるで現代においてえがかれたような 「グラフィックス」であり、子供から大人までがたのしめる生態系の図鑑のようです。




わたしは、開室時間の9時30分に会場に到着しましたが長蛇の列がすでにできていました。入室までに約30分かかり、中に入ったら大混雑となっていました。じっくり観るためにはなるべくはやめに行った方がよいでしょう。なおチケット購入の列が入室の列とは別にできています。チケットはオンラインなどで事前に買ってから出かけた方がよいです。


▼ 関連記事
万物が共生する世界へむけて - 若冲展(まとめ&リンク)-

チケット購入 >>
混雑状況はこちらで確認できます >>

▼ 注1
特設サイト「生誕300年 若冲展」
東京都美術館のサイト

▼ 追記
若冲は、「草木国土悉皆成仏」の思想を「釈迦三尊像」と「動植綵絵」で表現したとかんがえられています。