よい感情とともに意識の内面にインプットされた記憶は睡眠中に強化されます。また睡眠により感情の再調整がおこなわれます。情報処理では感情が大きな役割をはたします。

ペネロペ=ルイス著『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』(インターシフト)の第9章「いつまでも忘れられない記憶」では、睡眠が記憶を強化したり調整したりすることについてのべています。


すべての記憶は平等に創られている───わけではない。私たちは強い感情を伴う出来事を、日常の出来事よりはるかによく覚えている。(中略)

感情が伴う記憶は平凡な記憶よりもよく覚えられるだけでなく、睡眠によって、より強力に保護される。(中略)

睡眠は活発に差別を実行し、一部の記憶を強化するとともに、残りは無視するか、積極的に抑制することさえあるという証拠が見つかっている。


たとえばつぎのような、つよい感情をともなう出来事は重要な情報として認知され強力に記憶されます。


  • 魅力を感じている誰かにキスされたこと。
  • あるキノコを食べたあとで体の具合が悪くなったこと。
  • 友達からもらったとびきり美味しいアイスクリームの名前。


睡眠中には、重要とおもわれる情報がターゲットとして選択されるようです。つぎのような情報が選択されます。


  • 感情がともなっている情報
  • いつも重要だとおもっている情報
  • あとで利用することを自覚している情報


情報の重要性は個人の認識によって決まるのはいうもでもないことですが、ここで注目すべきことは無意識のうちに重要な情報が睡眠中に選択され記憶が強化されるということです。

一方で睡眠中には感情の調整もおこっています。疲労がたまるにつれて感情の反応は否定的なものになることがよく知られていますが、おきてからあらたに出会う刺激に適切に反応できるように睡眠は感情を再調整します。さらに睡眠が、危険な記憶の感情をやわらげ心の傷をいやすという説もあります。


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このように意識の内面に情報をインプットするときには、できるだけよい感情とともに あるいはよい感情をこめてインプットするとよいです。一方で、しっかり睡眠をとることによって自動的に感情を調整し感情をよくしていきます。

したがって疲労が蓄積していたり、イライラしていたり、不快な感情があるときには情報のインプットはしないで、そういうときにはさっさと寝てしまうのがよいです。そして翌日、あらためてインプットするようにします。こうして、よい感情をこめて情報をインプットし、睡眠をとって記憶を強化するとともに感情をよくして、おきてからまたインプットするとよいでしょう(図1)。

160415 感情
図1 感情と睡眠と記憶



▼ 引用文献
ペネロペ=ルイス著(西田美緒子訳)『眠っているとき、脳では凄いことが起きている -眠りと夢と記憶の秘密-』インターシフト、2015年12月10日
眠っているとき、脳では凄いことが起きている: 眠りと夢と記憶の秘密 

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