原発事故と放射能被害について理解するためには、さまざまな事象を定量的にとらえるように努力しなければなりません。


山口幸夫著『ハンドブック 原発事故と放射能』(岩波書店)は原発事故と放射能被害に関する入門書です。福島原発事故を中心にして順序立てて論理的に解説しています。


目 次
第1章 事故はどういうものだったのか
 地震、津波、そして、すべての電源を失った
 情報が混乱し、対応ができなくなった ほか
第2章 放射能とはどんなものか
 X線の発見ー放射能の背景
 放射能の発見 ほか
第3章 被曝とはどういうものか
 ヒロシマ・ナガサキの被爆
 スリーマイル島、チェルノブイリJCO事故 ほか
第4章 エネルギーについて知っておきたいこと
 電気という便利なエネルギー
 エネルギーのフローチャート ほか


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福島第一原発の原子炉は、アメリカから輸入された沸騰水型原発の原子炉「マーク I 型」という初期のタイプのものであり、危険だという批判が当初からありました。アメリカ合衆国議会原子力合同委員会での証言ものこっています。これとおなじ型の原子炉は日本各地にあり、大きな危険性をすでに はらんでいます。

日本の国会事故調査委員会の報告書は、「福島第一原発事故は人災であった」と結論しています。対策を立てる必要を知っていながら立てなかったということです。

国際原子力・放射能事象尺度におて、福島第一原発事故はもっとも危険な「レベル7」(深刻な事故)と認定されています。尺度はレベル0からレベル7まであります。チェルノブイリ事故もレベル7、スリーマイル島事故はレベル5です。

したがってチェルノブイリが参考になります。チェルノブイリ原発事故は子供・成人をとわず、放射線被曝による深刻な障害を広範にもたらしました。事故処理・除染などの事後の対応に従事した人たちも被曝しました。とりわけ内部被曝の影響が深刻です。食べ物や飲み物、呼吸によって体の中に放射性物質が入ってしまい、体内の臓器にとどまって放射線を出しつづけたいへん危険な状態です。

福島県のある小学校の先生は、2011年5月19日から2012年8月27日までに積算して 1.94 ミリシーベルトをあびました。これに、測定しはじめる前の2ヶ月間の大量被曝量をくわえれば6〜7ミリシーベルトを超えているのではないかと心配されます。この数値は、原発での労災認定がされていい値です。実際には、この先生よりも被曝量の多い人はたくさんいるのではないか。子供たちもふくめて数十万人がそうではないかとかんがえられています。

福島原発事故で緊急避難した人たちが除染後にもとの居住地にかえれるかどうか。避難指示解除準備区域は、年間 20 ミリシーベルト以下とされました。しかしこれはずいぶん高い線量値です。




原発事故や放射能について理解するためには数値につよくなり、定量的な理解ができるようになければなりません。

そうでないと、役所や専門家が言っていることがよくわかりません。「放射線量は少ないです」「安全が確保される量です」「人体への影響は確認されません」といった定性的な表現(言葉による表現)にごまかされてしまいます。具体的にしめすとは定量的に表現するということです。たとえばミリシーベルトといわれたとき、数値とともに、それが1日あたりなのか1ヶ月あたりなのか1年あたりなのか、しっかりおさえなければなりません。

原発に関しては定量的にとらえる努力をおこたることはできません。


▼ 注
通常の人が1年間に受ける放射線量は1〜2 mSv(ミリシーベルト)といわれています。

▼ 引用文献
山口幸夫著『ハンドブック 原発事故と放射能』(岩波ジュニア新書)岩波書店、2012年11月20日
ハンドブック 原発事故と放射能 (岩波ジュニア新書)

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