現代は光の時代であるといってもよいでしょう。光を知り、光をつかいこなすことは今後ますます重要になってきます。

『光の科学』(ニュートンプレス)は光の科学の入門書です。イラストレーションと簡単な文章で専門知識がなくても理解できる内容になっています。


目 次
1 目に見える光、目に見えない光
2 色とは何か
3 光の屈折 そのしくみとレンズ
4 光の反射 そのしくみとさまざまな鏡
5 身近な光の現象 空はなぜ青いのか
6 光は「電磁波」だった
7 光の速さからみちびかれた相対性理論
8 光は「波」でもあり「粒」でもある
9 光を利用するテクノロジー


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1 目に見える光、目に見えない光
太陽には、目に見えない光もふくまれています。太陽にあたるとあたたかく感じるのは、太陽光にふくまれる赤外線が原因です。また日焼けするのは、太陽光にふくまれる紫外線が原因です。赤外線や紫外線は人間の目には見えません。


2 色とは何か
光そのものには色はついていません。
 
目は光をうけるセンサーです。光は、レンズの役割を果たす「角膜」と「水晶体」でまずあつめられます。あつめられた光をうけるのが目の奥にある「網膜」です(注)。たとえるならばこれはデジタルカメラのCCDに相当します。網膜で光は信号に変換されて、その信号は神経を通じて脳におくられ、脳はそれを色として認識します。
 
このように光そのものには色はなく、色は脳でつくられています。


3 光の屈折 そのしくみとレンズ
屈折とは、光が折れ曲がる現象です。レンズは、屈折のしくみを利用したものです。虫眼鏡や望遠鏡は凸レンズをつかって光を屈折させて見るものを拡大する道具です。凹レンズは近視用のメガネにつかわれます。


4 光の反射 そのしくみとさまざまな鏡
鏡はすべての光を反射します。入射した光を1点にあつめるように反射させる鏡が凹面鏡です。世界最大級の望遠鏡は凹面鏡で光をあつめています。その反対に、光りをひろげるように反射させるのが凸面鏡です。カーブミラーは凸面鏡がつかわれています。
 

5 身近な光の現象 空はなぜ青いのか
水滴による光の屈折で虹ができます。空が青く見えるのは空気分子が光りを散乱するからです。夕日が赤く見えるのは、波長の短い光(青色や紫色)がほとんどとどかなくなり、波長の長い光(赤色)の光だけがとどくからです。


6 光は「電磁波」だった
光は波の性質をもちます。電気と磁気とはたがいに"双子"のような関係であり電気と磁気とがつくる波を電磁波といいます。電磁波がすすむ理論的な速度は秒速約30万キロメートルであり、光のすすむ速度と同じであることから、光は電磁波であるとかんがえられるようになりました。


7 光の速さからみちびかれた相対性理論
アインシュタインは、時間の進み方や空間のなかの長さは観測する人によって変化(伸びちじみする)すると説明しました。


8 光は「波」でもあり「粒」でもある
光を金属の板にあてる実験をおこなうと電子がとびだしてくることがあります。光は粒としての性質ももちます。光は波でもあり、粒でもあるのです。
 

9 光を利用するテクノロジー
太陽光発電、レーザー光、光通信、光ディスクなど、光は、わたしたちの生活にふかくかかわるようになりました。




情報処理の観点から注目すべきことは、光そのものには色はついておらず、色は脳がつくりだしているということです。
 
脳が色をつくりだしているということはヒト以外の動物でもおなじです。たとえば多くの哺乳類では光をうける網膜の「視物質」がヒトよりも少ないために、ヒトよりも色彩のとぼしい世界を見ています。あるいは魚類や爬虫類・鳥類はヒトには見えない紫外線も見ています。したがってこれらの動物が見ている世界とわたしたちヒトが見ている世界とはことなります。

また植物の葉は、光源からの白色光のうち、緑色の波長の光以外は吸収し、緑色の波長の光を多く反射するので、わたしたちには緑色に見えます。葉そのもが緑色をもっているというわけではありません。

こうして色には実体はなく、ヒト独自の情報処理の結果として色が生じているということがわかってきます。わたしたちの外界は色彩ゆたかな世界であるということではなくて、わたしたちの脳は、ゆたかな色彩をつくりだす情報処理能力をもっているということです。




現代は光の時代です。光なくして現代社会はなりたちません。たとえば光通信は世界を劇的に変えました。光通信網は、これまでとはまったくちがうあたらしい世界をつくりだしました。そのほかにも光をつかったテクノロジーがわたしたちの生活の中に浸透してきています。光について知り、光をつかいこなすことはこれからの時代ますます重要になってくるでしょう。


▼ 注
可視光は、網膜の中の視物質の分構造を変えます。これが電気信号となって脳へおくられます。

▼ 引用文献
『光の科学』ニュートンプレス、2012年4月5日
光の科学 (ニュートンムック BASIC SCIENCE ILLUSTRATED)
 
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