世界地図帳をつかうことによって、世界を概観したり地球を大観することが容易になります。

『世界の地図の歴史図鑑』(柊風舎)で解説している『世界の舞台』と『アトラス』の出版は地図の歴史における非常に大きな転換点となりました。わたしたち人類のグローバルな認識は『世界の舞台』と『アトラス』からはじまったといってよいでしょう。

ルネサンス時代の地図製作で注目すべき業績の1つは、世界地図帳であった。表紙をめくると世界が広がり、概観されていた。(122ページ)

1570年、アブラハム=オルテリウスは『世界の舞台』を出版しました。これは1冊の本のなかに世界を網羅した世界最初の世界地図帳であり、地球を容易に概観できる内容でした。

オルテリウスは地図の画家であり、水彩絵の具をつかって彩色をした地図をえがいていました。最初は、羊皮紙の巻物にえがいていたので、数点の地図を見くらべたいときには巻物をひらいて文鎮でおさえなければならずとても不便でした。そこで巻いたり ひらいたりといった問題を解消するために多数の地図を1冊の本に集大成しました。

この地図帳は大成功をおさめ、1724年までに89版以上、7300冊ほどが印刷され、地図の歴史における革命となりました。今でも2000冊が現存しています。


IMG_4020


一方1595年になると、メルカトルの『アトラス』が出版されました。

1569年、ゲラルドゥス=メルカトルは、あたらしい投影図法(今日メルカトル図法として知られている)をつかって世界図をつくりだしました。

メルカトルは1594年に死去しましたが、息子のルモルドが、彼の地図すべてを1巻にまとめて『アトラス』として出版しました。

『アトラス』は、オルテリウスの『世界の舞台』のような仰々しい美的装飾はほとんどなく、事実に即した地理的データを展示したような内容になっていました。この本も非常に大きな反響があり、数多くの版をかさねました。17世紀のオランダ人の「大アトラス」のひな型にもなりました。「アトラス」という書名は地図帳一般をさすようになったのでした。そして今日にいたるまで「アトラス」は、より正確により精密な地図帳へと発展していくことになります。


現代のわたしたちは、世界あるいは地球の全体象を容易にみることができます。そして今日、グローバル化はいちじるしくすすみ、どのような分野においてもグローバルな情勢をとらえることなしに問題を解決することはできなくなっています。グローバルな認識は問題を解決するための第1段階として必要です。

グローバルに課題をとらえるにはどうすればよいか。いかに地球を大観すればよいか。そのようなときに地図がとても役立ちます。


▼ 引用文献
ジョン=レニー=ショート著『世界の地図の歴史図鑑 岩に刻まれた地図からデジタルマップまで』柊風舎、2010年11月15日
ビジュアル版 世界の地図の歴史図鑑―岩に刻まれた地図からデジタルマップまで


Sponsored Link