生命は、自分の体の内と外とのあいだで物質やエネルギーなどのやりとりをしながら生きています。

『やさしくわかる生命の科学』(Newton別冊/ニュートンプレス)は「生命とは何か?」という大きなな課題に現代の科学者がどのようにいどみ、何をかんがえているかをわかりやすく解説しています。過去の『Newton』誌上に掲載された記事をまとめたものです。

生命は、多くの謎に今なおつつまれています。生命についてはわからないことがまだたくさんあります。生命と非生命の境界についてさえも科学者のあいだで見解がわかれています。

目 次
プロローグ 生命をめぐる疑問
1 生命の共通点
2 ウィルス
3 生命の誕生
4 生物の進化
5 “生きている”とは何か
6 生命の最先端研究
7 地球外生命
エピローグ 研究者が語る“生命とは何か”


地球上の生物はつぎの3つのグループ(ドメイン)にわけられます。これらは共通の祖先から分化しました。
 
(1)細菌
(2)古細菌
(3)真核生物
   ・原生生物(ゾウリムシやアメーバなどの単細胞生物)
   ・菌類(カビやキノコの仲間)
   ・植物
   ・動物


これらの生物に共通する特徴としては以下のことがあります。
  • 刺激に応答する。
  • 外から栄養をとる。
  • 内と外との区別がある。
  • 自分と同じ姿をしたものがふえる。

周囲の刺激に応答しながら生きていることはすべての生物に共通する特徴です。またすべての生物は生きるために外から栄養をとりいれ、エネルギーを体内でつくったり体を構成する材料にしています。このような体内における一連の化学反応のことを「代謝」とよびます。そして、不要な物質は外に排出しています。

このような生物のすべては細胞を基本単位としてできています。生物の体内では細胞の誕生と死がたえずおきていて、細胞の誕生と死のバランスによって生命体は維持されています(注1)。

地球上における最初の生命の誕生に関しては、「生命は RNA からはじまった?」と「生命はタンパク質かがらはじまった?」という仮説が紹介されています。「RNA」(リボザイム)は化学反応を促進する装置としてはたらくものです。

また進化とは、分子レベルでみれば、生命の設計図であるゲノムが世代をへるにつれて書きかえられていくことです。

生命は、外部とのあいだにエネルギーや物質のやりとりをもっているので、その秩序だった構造を維持することができています。逆にやりとりがない場合には、エントロピー増大の法則にしたがって時間とともに秩序だった構造は崩壊していくことになります。

以上の生命の特徴を模式的にあらわすと下図のようになります。

151031 生命
図 生命のモデル
 
 
生命がおこなっている内と外とのあいだのやりとりに注目することはとても大事なことです(注2)。本書は読み物としてもとてもおもしろいです。類書の『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊、注3)とあわせて読むと生命科学についての理解が一段とすすむでしょう。



▼ 引用文献
『やさしくわかる生命の科学』(Newton別冊)ニュートンプレス、2014年8月15日
やさしくわかる生命の科学―生命と非生命の境界,最初の生命,進化,生命創生など (ニュートンムック Newton別冊)

▼ 注1
あたらしい細胞をつくる方法は「細胞分裂」です。一方、細胞が死ぬしくみは「アポトーシス」(自死)と「ネクローシス」(事故死や病死)です。「ネクローシス」とは、やけどや酸素不足、病原体によるダメージによって細胞が死ぬことです。

▼ 注2
刺激・物質・エネルギーが生命の内部に外からはいってきます。刺激は情報といいかえてもよいです。生命の内部では情報の処理と代謝がおこります。そして生命は運動や行動、不要物質の排出をします。人類の場合は話したり書いたりもします。これは応答するということです。

このようなプロセスは、<インプット→プロセシング→アウトプット>といってもよいです。整理するとつぎのようになります。
 インプット:刺激・物質・エネルギーが生命の中にはいってくる。
 プロセシング:情報処理・代謝。
 アウトプット:運動・行動・排出する。

▼ 注3
田沼靖一(監修・執筆)『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊)、ニュートンプレス、2013年7月15日

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