伊藤弥寿彦(執筆)・佐藤岳彦(写真)『生命の森 明治神宮』(講談社)は明治神宮の森の多様な生態系を紹介した写真集です。

本書をまず見てから明治神宮の森へ行ってふたたび本書を見直せば、森林に関して認識をふかめることができます。

目 次
第1章 明治神宮の森
 コラム 明治神宮の森の歴史

第2章 明治神宮の生きもの
 コラム 明治神宮の生態調査

第3章 生命のつながり

解説

あまり知られていないかもしれませんが、明治神宮の森はおよそ100年前に人の手によってつくられた人工の森林です。

100周年の記念事業として最近おこなわれた大規模な生物調査の結果、さまざまな貴重な生物が生息していることがあきらかになりました。本書はその記録でもあります。

最初の植林はおよそつぎのようにおこなわれました。

スギやヒノキなどの単一な種ではなく、さまざまな種類の樹木をうえて自然にまかせて競い合わせ、未来永劫につづく森の完成を目指した。具体的には、この地域の潜在的な植生であるカシやシイなどの常緑樹の森を作ることを目指した。

  1. まず、50年後、100年後、150年後の変化をかんがえた3段階の予想林相図をつくりました。
  2. 最初に、日光をこのみ北風にたえられる大きなアカマツとクロマツを植えました。
  3. それら間に、やや低いヒノキやサワラ、スギ、モミなどの針葉樹を植えました
  4. そしてそれら間に、将来の主林木となるカシ、シイ、クスノキなどの常緑広葉樹を植えました。
  5. さらに、イヌツゲ、クロガネモチ、サンゴジュ、マサキ、ネズミモチなどの大気汚染につよい常緑広葉樹を植えました。
  6. 森にいろどりをそえるイロハモミジやケヤキ、エノキなどの落葉広葉樹を植えました。
  7. こうして100年後にカシやシイなどを主体とする「極相林」とよばれる安定し森にすることを目指しました。

このように明治神宮の森は世界的にみてもユニークな実験の森だったのです。そして100年ちかくたった今、そのとおり見事な極相林となって成長をつづけています。実験は成功したというわけです。

そして森林はさまざなな動物もはぐくみゆたかな生態系を形成しました。本書にはつぎよう鳥類や昆虫が紹介されています。

オオタカ、オシドリ、ダイサギ、カワセミ、アカゲラ、ハクセキレイ、コゲラ、キビタキ、シロハラ、ルリビタキ、ヤマガラ。

ヤマトタマムムシ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、アサギマダラ、アオバハゴロモ、オニヤンマ、トゲアリ、カブトムシ、コカブトムシ、ノコリギクワガタ、コクワガタ。

その他、タヌキやアオダイショウもいます。

きれいな写真がでていますのでこれらの動物の姿と名称をおぼえてしまうのがよいでしょう。

本書を見たら、明治神宮の森に実際に行って見るのがよいです。そしてふたたび本書を見れば、森林の見え方がちがってきます


151026 森林


こらまでの100年間の森の変化を想像し、森や生態系について認識をふかめることができるでしょう。


▼ 引用文献
伊藤弥寿彦 (執筆)・佐藤岳彦 (写真)『生命の森 明治神宮』講談社、2015年4月22日
生命の森 明治神宮