東京都美術館
東京都美術館の企画棟(出典:Google Earth)

東京・上野の東京都美術館で「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」(注1)が開催されています。今回は、会場となっている東京都美術館の企画棟(建物)の階層構造をつかって世界史を概観してみたいとおもいます。


■ 企画棟(展覧会場)の階層構造をとらえる
今回の展覧会場には100個の作品モノ)が展示されていて、これらのモノのいくつかがあつまって1つの展示室をつくっていました。展示室はのべ8部屋ありました。

そしていくつかの展示室があつまって1つのフロアができていました。フロアは地下1階・地上1階・地上2階の3フロアとなっていました。

さらに、これらの3つのフロアがあつまって東京都美術館の企画棟(写真)が形成されていました。

展覧会場の東京都美術館の企画棟はこのような階層構造になっていました。


■ 展示内容を階層構造でとらえる
つぎに展示内容をみていきます。

展示室はつぎの8つの部屋から構成されていました。これらは世界史を8つの段階に区分したもので、歴史のなかのそれぞれの時代をあらわしていました。各展示室(部屋の空間)を意識することによりそれぞれの時代を体験できる仕組みになっていました。

第1展示室「創造の芽生え」
第2展示室「都市の誕生」
第3展示室「古代帝国の出現」
第4展示室「儀式と信仰」
第5展示室「広がる世界」
第6展示室「技術と芸術の革新」
第7展示室「大航海時代と新たな出会い」
第8展示室「工業化と大量生産が変えた世界」

つぎにフロアに注目してみると、第1〜3展示室は地下1階にありました。第4〜6展示室は地上1階、第7〜8展示室は地上2階にありました。

第1〜3展示室:地下1階
第4〜6展示室:地上1階
第7〜8展示室:地上2階

フロアの内容はそれぞれつぎのようにとらえられ、文明というより大きな概念が感じられました。フロアの空間を意識すると文明を体験できる仕組みです。

地下1階:文明のはじまり
地上1階:前近代文明
地上2階:もっと大きな文明の形成(グローバル化あるいは近代化)

そしてこれらのフロアがあつまって東京都美術館の企画棟(建物全体)が形成されており、この企画棟は、人類史の舞台あるいは空間であり、つまり地球に相当すると類比することができます。

企画棟:地球


■ 階層構造の類比をつかって理解をふかめる
階層構造とは、あるモノ(要素)が複数あつまってひとつのユニット(集合体)をつくり、そしてそれらのユニットが複数あつまって中ユニットをつくり、さらにそれらの中ユニットがあつまってもっと大きなユニットを形成していく構造のことです。

今回は、建物の階層構造と人類史の階層構造とを類比して理解をすすめてみました(図)。今回の展覧会は、階層構造の類比が特によくみとめられたすぐれた例でした。

150615 会場の階層構造と人類史の階層構造の類比

図 建物の階層構造との類比により世界史をとらえなおす。
 

階層構造に注目すると、個々のモノだけを見ていたときには見えなかったこと(時代とか文明といったこと)がつかみやすくなります。時代はモノを超え、文明は時代を超えていることもわかります。

具体的には、会場に行ったらモノに意識をくばるだけではなく、展示室に意識をくばり、フロアに意識をくばり、企画棟全体にも意識をくばることが大切です(注2)。

この方法は、言葉や理屈で対象をとらえる従来の学習法とはちがい、視覚的・空間的・体験的に物事を認知する方法です。記憶法としてもつかえます。


▼ 注1
東京都美術館「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」
東京都美術館の会期は2015年6月28日まで。その後、九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)に巡回します。

▼ 注2
ここでいう意識をくばるとは、意識してその空間をよくみて感じることです。普通よりも時間をかけるということではありません。時間をかけるよりも視覚をつかうことです。こうすることにより比較的短時間で飛躍的に理解をふかめることができます。

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