金森博雄著『巨大地震の科学と防災』第七章「予知・予測への期待と現実」では、地震発生の予測は確率論的にしかできず、地震予知はできないことをのべています。

現在、日本政府の地震調査研究推進本部は、海溝型や活断層の地震について、今後30年間に何パーセントで発生するといった確率予測を発表しています。

ここで問題になるのは、確率の数値をしめされた国民はどう対応したらよいのかということです。

たとえば地震の発生確率が30パーセントだとあまり備えなくてよいのか、確率が60パーセントをこえた場合はいそいで備えよということなのか? 

そうではないのです。確率が何パーセントであろうと大地震の可能性があるかぎりしっかりと備えておかなければならないのです。訓練もしておく必要があります。それが現実というものです。

確率予測は、天気予報を例にしてかんがえるとわかりやすいでしょう。

わたしはフィールドワークやトレッキングによく行きます。そのときにはかならず雨具をもっていきます。天気予報の降水確率が何パーセントであってもです。

降水確率が80パーセント以上だと雨がふるだろうと想像します。しかし降水確率がたとえ10パーセントであっても雨がふる可能性はあります。さらにたとえ快晴の予報であっても雨具は持参します。なぜなら天気予報ははずれることがときどきあるからです。局所的な天候の急変もありえます。山岳地帯にいてもし雨がふってきて雨具がなかったら大変なことになります。生死にかかわることもあります。したがって備えておくことが必要です。

大地震についても同様なことがいえます。 

金森さんはつぎのようにのべています。

地下の破壊現象にはさまざまな要因が複雑に影響を及ぼすため、確率論的にしか予測はできません。普通の人が知りたい「明日、大地震は起こるのか」といった質問に答えることはできないのです。

地震にしろ天気にしろ確率予測は、わたしたちに注意や警戒をおこたらないように、あらかじめ備えておくようにというメッセージをつたえているのだとうけとめた方がよいです。来るものは来るのですから準備しておくことが必要です。



▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

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